アルミリサイクルとは?何になるか、現状の課題とリサイクル率の高さ

アルミニウムのリサイクルは、高いリサイクル率などから事業の持続性や資源循環の観点から注目を集めています。一方で海外の保有国は資源枯渇を懸念し、採掘制限を設ける事態に陥っており、アルミニウムのリサイクルはより重要視される傾向にあります。本記事では、アルミニウムのリサイクルの重要性や環境にもたらす影響、リサイクル時の課題などについて解説します。

五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、現在のサーキュラーエコノミーが抱える課題に多面的にアプローチし、多用な手法を組み合わせて企業の環境経営を包括的に支援します。

INDEX

1.アルミのリサイクルについて

前提としてアルミニウムは、赤褐色の鉱石であるボーキサイトを主原料とします。ボーキサイトからアルミナを抽出後、電気分解して作られたものがアルミニウムです。

ここでは、アルミニウムのリサイクルの概要を解説します。

(1)アルミのリサイクルにおける特徴

アルミニウムの軽量性・耐食性・強度・導電性・熱伝導性などの特性と相まって、幅広い産業で活用されています。アルミリサイクルの主なメリットは、以下のとおりです。

  • 何度でもリサイクル可能で、品質が劣化しにくい
  • 製造時のエネルギー消費が少なく、新規製造よりもコストが低い
  • 回収・分別が比較的容易で、リサイクルシステムが確立されている

そのため、新たに鉱石(ボーキサイト)からアルミニウムを製造するよりも、リサイクルを活用する方が環境負荷を低減でき、エネルギーの大幅な節約につながります。

また、アルミニウムは加工しやすく、さまざまな製品に活用できます。

利用方法具体例
圧延(薄く伸ばす)による利用飲料缶、食品容器
押し出し加工(特定の形状に成形)による利用建材(サッシ・ドア・手すりなど)、自動車部品、鉄道車両
鋳造(溶かして型に流し込む)による利用エンジン部品、機械部品、装飾品、デザイン製品
切削・溶接などの加工が容易精密機器(スマートフォン・ノートPCなど)、医療機器

(2)アルミリサイクルマークとその意味

アルミリサイクルマークは、一般的に三角形の矢印(リサイクルシンボル)「ALUMINIUM」や「アルミ」の表記が組み合わされたデザインで表されます。これにより、スチール缶など他の金属との区別が容易になり、正しい回収・リサイクルプロセスへと導くことができます。また、アルミリサイクルマークには以下のような意味や目的もあります。

意味具体的な役割
資源の有効活用アルミはリサイクルしても品質がほとんど劣化せず、繰り返し利用できる。資源の循環利用を推進。
環境負荷の低減新規精錬時のエネルギー消費はリサイクルの約20倍。CO₂削減効果を消費者に意識させる。
リサイクル率の向上アルミ缶は国内で90%超の高リサイクル率。マーク表示により分別徹底を促し、更なる回収率向上につなげる。

このように、アルミリサイクルマークは単なる表示ではなく、循環型社会の実現に向けた重要な仕組みの一つといえるでしょう。

(3)アルミリサイクルの柔軟性

使用済みのアルミ製品やスクラップは、リサイクルを経て二次合金地金へと再生されます。
二次合金地金は、溶解工程で銅やマグネシウムなどの金属を添加することで、強度や耐久性、軽量性などの特性を持つアルミ合金へと再生されます。

添加する金属の種類によって、異なる特性を持つアルミ合金が作られます。代表的な例は以下の通りです。

添加金属主な用途
銅・マグネシウム航空機や自動車部品に使われる「ジュラルミン」の原料
マグネシウム・シリコン建材やアルミサッシなどの構造材

アルミリサイクルの柔軟性によって多様な産業での活用を可能にしています。

(4)アルミリサイクルは何になる?再利用先の具体例

アルミはリサイクルしても品質がほとんど劣化しない特性を持っているため、幅広い製品に再利用されます。実際に回収されたアルミ缶や廃材は、溶解・精錬の工程を経て、新たな製品として生まれ変わります。主な再利用先は以下の通りです。

再利用先具体例
飲料缶(アルミ缶)回収されたアルミ缶が再び缶として循環。日本では数か月で「缶から缶へ」と再生されるケースも多い。
自動車部品エンジン部品、ホイール、車体フレームなど。軽量化と燃費向上のためアルミ利用が拡大。
建築資材窓枠・サッシ、外壁材、屋根材など。耐久性と軽量性を活かした建材として活用。
家電・電化製品冷蔵庫、洗濯機、パソコンの筐体や部品。導電性・耐久性が求められる製品に使用。
その他の製品自転車フレーム、調理器具(鍋・フライパン)、携帯電話やタブレットのボディなど。

このように、アルミリサイクルは単なる資源再利用にとどまらず、自動車や建築など社会インフラに直結する分野から日常生活用品まで幅広く活用される点が特徴です。

2.アルミリサイクルの現状と課題

(1)アルミニウムリサイクルの問題点|不純物混入・品質低下など

アルミニウムは「何度リサイクルしても品質が劣化しにくい」という特性を持つ一方で、実際のリサイクル現場ではいくつかの課題が存在します。主な問題点は以下の通りです。

問題点具体的な影響
不純物の混入鉄・銅・プラスチックなどの異物混入により、強度や耐久性が低下。特に異種金属は品質に大きく影響。
品質の低下微量元素の蓄積や不純物残留で電気伝導性や強度が低下。自動車や航空機など高強度用途には制限が生じる。
回収・分別コストの増加缶・自動車部品・建材など製品の多様性から分別が難しく、効率化に高度な技術とコストが必要。
再資源化に伴うエネルギー消費新地金の精錬より削減効果は大きいが、溶解・不純物除去には依然として多くのエネルギーを要する。

このように、アルミリサイクルは資源循環の要として大きな役割を担っていますが、品質維持やコスト削減、不純物対策など解決すべき技術的・経済的課題が残っているといえます。

(2)アルミリサイクル率の高

引用:アルミ缶リサイクル協会

アルミ缶は、「CAN to CAN」(缶から缶へのリサイクル)が可能であり、品質を維持したまま繰り返し再生できるため、効率的な水平リサイクルが実現しています。

アルミ缶リサイクル協会のデータによると、2023年度のアルミ缶リサイクル率は97.5%に達しており、そのうち「CAN to CAN」リサイクル率は73.8%を占めています。

つまり、回収されたアルミ缶の約4分の3は、新たなアルミ缶として再利用されていることになります。

(3)アルミニウムの価格推移

引用:中小企業庁

Refinitivのデータによると、アルミニウムの先物価格は2015年から2020年半ばまでは比較的安定して推移していましたが、2018年〜2019年には一時的な下落が見られました。

その後、価格は上昇を続け、2021年には2015年・2019年の水準を大幅に上回り、2022年3月には3,572 USD/トンに達しました(2022年3月25日時点)。

2022年3月の急騰後、一時的に価格が下落しましたが、これはロシア・ウクライナ情勢の影響により市場が不安定化したためと考えられます。その後、供給不足の懸念やエネルギー価格の影響を受け、再び上昇傾向となっています。

また、日本ではアルミニウムの主原料であるボーキサイトを産出できず、すべて輸入に依存しているため、世界的な需要の急増供給の制約が発生すると、価格がさらに高騰するリスクがあります。

3.アルミリサイクルが可能な主要廃棄物

ここでは、アルミリサイクルが可能な主要廃棄物を紹介します。

(1)自動車部品

アルミは以下の自動車部品に使用される場合があります。

  • タイヤのアルミホイール
  • アクセルやギアボックスのハウジング
  • エンジンブロック、シリンダーヘッド
  • 電気自動車のバッテリー部品

アルミは軽量素材であり、自動車部品として多用すれば軽量化を図れます。車両重量が軽くなれば燃費が向上し、燃料費のコスト削減に有効です。

(2)建築廃材

アルミ素材は、外壁や屋根材などの建築材料にも使用される場合があります。

  • アルミサッシ
  • 内外装に使用するアルミパネル
  • アルミ製の手すりやドア
  • エクステリアに使用するレインガード、フェンス
  • アルミ製の屋根材、階段、支柱
  • 店舗の看板

浸食性にも優れているアルミ製品は、建築資材として多様化しており、表面塗装を施した製品もあります。
さらに建築材料のアルミ製品は、大きなサイズのものが多く、効率的な回収・リサイクルが可能です。

(3)アルミ缶

アルミ缶は、政府主導で官民が協力してリサイクルに取り組んでいます。
分別回収などで高いリサイクル率を維持しています。

(4)家電製品

家電製品にも多くのアルミ製品が利用されており、たとえば、以下のようなものがあります。

  • 家電4品目(冷蔵庫・冷凍庫・洗濯機・衣類乾燥機・テレビ・エアコン)
  • 電子レンジ、オーブン、トースター、コーヒーメーカー
  • 掃除機、アイロン、ヘアドライヤー、扇風機 など

アルミ製品は、熱伝導率が良く軽量であることから、多くの家電製品にも活用されています。

家電製品によっては、使用部品が小さく回収が困難なケースもあり、効率的な回収や高度な選別技術が求められます。

(5)IT・通信機器

アルミは軽くて強度があるため、IT・通信機器にも使用されています。

  • パソコン、サーバー、プリンター、キーボード、冷却ファン
  • ケーブル、固定電話機、スマートフォン、タブレット
  • スピーカー、ヘッドフォン、CD、デジタルカメラ など

IT機器や通信機器に使用されるアルミ製品は、家電製品と同様に部品が小さいモノがあり、回収と選別に技術を要します。

(6)医療品・食料品

多くの医療品や食料品にも使用されており、以下のようなものがあります。

  • 薬のシート状錠剤に使用されているアルミ部分
  • 使用済みの注射器
  • 医療機器、医薬品の容器、材料を入れるケース など
  • アルミホイル、アルミトレイ、アルミパウチ、アルミ缶の缶詰
  • チョコレートやヨーグルトなどのアルミ包装
  • 飲料品のアルミキャップ など

食料品に使用されているアルミ製品には、アルミ箔のように非常に薄く加工されている場合があります。そのため、他の業界よりも回収と分別が困難です。

しかし、薄くて小さな場合にも、すべて回収してリサイクルできれば資源の有効活用に貢献します。

(7)工場の廃材

アルミを取り扱っている工場では、アルミの製造過程やアルミ製品の加工過程で以下のスクラップが発生します。

  • 切削くず、切粉
  • 不良品、規格不適合品

工場で発生するアルミスクラップは、不純物の混入が少ないので選別の手間を省略できます。

その他にも、アルミニウムの特性である耐食性や軽量性を活かし、造船や航空宇宙の材料として軽量化に役立てられています。

4.アルミを含む産業廃棄物の処分方法

アルミを含む産業廃棄物は、主にリサイクルと埋め立て処理のどちらかの方法で処分されます。ここでは、アルミを含む産業廃棄物の処分方法を解説します。

(1)リサイクル

アルミはリサイクル適性が非常に高い金属であり、適切に処理することで何度でも再利用が可能なため、産業廃棄物として排出されるアルミを適切にリサイクルすることで、資源の有効活用環境負荷の低減につながります。

アルミを含む産業廃棄物をリサイクルする際は、他の素材との分別が非常に重要です。不純物が混入すると、アルミの純度が低下し、アルミ合金の強度や耐久性に影響を与えるためです。

そのため、リサイクル工程の中でも、溶解や精錬の前段階である「前処理」が特に重要視されます。産業廃棄物の段階で細かく分別することで、リサイクルの効率と品質が向上します。

また、作業効率の向上も課題の一つです。リサイクル業者がスムーズに処理できるよう、アルミと他の素材を可能な限り分別しておくことが望ましいとされています。適切に分別することで、処理時間やコストの削減にもつながります。

(2)埋め立て処理

リサイクルできないアルミを含む廃棄物は、最終処分場で埋め立て処理されます。埋め立て処理の対象となる産業廃棄物には、主に以下のようなものがあります。

汚染された廃棄物化学物質などによりアルミが汚染され、除染作業が困難なもの
分別が極めて困難なものアルミ部品が他の素材と複雑に絡み合い、分別・回収にかかるコストが過大なもの

特に、化学物質に汚染されたアルミはリサイクルが難しく、そのまま埋め立て処理されることが一般的です。また、アルミが他の素材と一体化し、分別が想定以上に困難な場合も、経済的・技術的な理由から埋め立てが選択されることがあります。

埋め立て処理は、適正な管理のもと最終処分場が責任を持って実施し、環境への影響を抑えるための安全対策が施されます。

なお、自社の敷地内であっても、無許可で産業廃棄物を埋め立てることは法律で禁止されており、ほとんどの場合「不法投棄」とみなされます。 産業廃棄物の不法投棄は、廃棄物処理法に基づき厳しく処罰されるため、適正な処理が求められます。

5.アルミリサイクルの主要プロセス

産業廃棄物として排出されるアルミは、高度な分別・精錬技術によって、高品質なリサイクルが可能となっています。

ここでは、アルミリサイクルの主要なプロセスについて詳しく解説します。

(1)アルミ製品の回収・分別

市場にはさまざまなアルミ製品が存在し、使用後に廃棄されたものは回収・分別されます。主な回収対象は以下の通りです。

  • 自動車に使用される部品やアルミホイール
  • アルミサッシなどの建築廃材
  • アルミ缶
  • CD・ハードディスク
  • 電線
  • アルミ製品の加工工場で発生する切粉 など

その他にも、さまざまな製品に使用されているアルミを回収し、異物や不純物を取り除くために細かく分別します。

(2)アルミ製品のスクラップ

分別したアルミスクラップは、専用の破砕機選別機を使い、細かく破砕・分別処理します。

この工程には以下の目的があります。

  • 体積を減らす
  • アルミ以外の金属や異物を除去
  • 溶解効率の向上

この段階で適切に処理することで、リサイクル工程の効率が向上します。

(3)溶解・成分調整

破砕・分別されたアルミスクラップは、高温加熱用のバーナーを用いて約700℃以上で溶解されます。

この工程では、最終製品の用途に応じて成分調整 を行うため、以下のような金属元素を添加することがあります。

  • 銅・マグネシウム
  • マグネシウム・シリコン

また、溶解時には、アルミの純度を確保するために不純物の除去も同時に行われます。

ここで除去しきれなかった異物は、次の工程でさらに精製されます。

(4)不純物除去

リサイクルされたアルミスクラップには、酸化物やガス、不純金属などの異物が混入していることが多いため、除去対象に応じて適切に除去することが重要です。

不純物除去の主な方法は、以下のとおりです。

除去対象方法概要
酸化物(スラグ)フラックス処理フラックス(精製剤)を投入し、酸化物を浮かせて取り除く
水素ガス脱ガス処理(ローターガス脱ガス法)アルゴンや窒素を溶湯中に吹き込み、水素を除去する
鉄やシリコンなどの不純金属電磁分離法磁場を利用して、不要な金属を分離する

この工程で 不純物をできる限り取り除くことにより、リサイクル後のアルミ製品の品質が向上 し、自動車部品や建材などの高品質な用途にも適用できるようになります。

(5)鋳造・再製品化

不純物を除去したアルミ溶湯は、鋳型に流し込まれ、アルミインゴット(二次合金地金)として成形されます。

このインゴットは、圧延・押出・鋳造などの加工工程を経て、アルミ缶や建材・自動車部品、精密機器など多種多様なアルミ製品に再生されます。

最終的な品質検査をクリアした製品のみが市場に流通し、持続可能な資源循環に貢献します。

6.アルミリサイクルにおける企業の事例

ここでは、アルミリサイクルの新たな技術開発に取り組んでいる企業の事例を2つご紹介します。

(1)アルミリサイクル使用比率100%のビレット量産化

引用:https://newsroom.lixil.com/ja/20230420_01

ある企業は、新地金を一切使用せず、100%リサイクルアルミによるビレット鋳造の量産化に成功しました。

従来、リサイクル材の安定調達や量産製造技術 に課題がありましたが、原材料の安定確保と技術開発の進展 により、それらを克服し、完全リサイクルアルミによるビレットの安定生産を実現しています。

この取り組みにより、精錬時のエネルギー消費を大幅に削減できるだけでなく、同社比でCO₂排出量を30%削減することを目標 に掲げ、さらなる技術開発を進めています。

(2)固相リサイクル法を活用した押出し加工技術開発

引用:https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2024/pr20240716/pr20240716.html

民間企業と独立行政法人が共同で、固相リサイクル法を活用したマグネシウムの押出し加工技術 を開発しています。

従来のリサイクル法とは異なり、固相リサイクル法では、「廃材回収 → 固相リサイクル法 → 押出し加工 → 再製品化」 という短縮されたプロセスで再生が可能です。

また、この技術で作られたリサイクル品は、従来の溶解リサイクル品と同等の品質を保持しています。

企業の調査で機械的特性や耐食性に劣化が見られないことが実証されており、高品質なリサイクル製品の製造が可能となっています。

6.まとめ

アルミのリサイクルは、回収と分別に課題があるものの、資源の再利用という観点で、環境課題解決の一対策として大きく貢献しています。

汚染されたアルミや分別困難な場合は、リサイクルが難しく、埋め立て処理が必要になるケースがありますが、アルミの今後の新たな技術開発に注目し、リサイクル率をより上げられる努力が不可欠といえます。

監修

エシカル・サステナブル分野の知見と実践を基盤に、情報発信・プロジェクト推進に携わるフリーランス。外資系広告代理店で10年以上、営業・翻訳・資料作成・プロジェクト進行に従事。退職後は環境問題に意識を向け、エシカルコンシェルジュ認定を取得し、サステナブルアイテムのショップも運営。広い視野で全体最適を図り、冷静かつ柔軟に課題解決へ導く力に強みがある。

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