エシカル消費とは?SDGsとの関連性や具体的な取り組み方法を解説

エシカル消費とは、消費者の消費行動を指す言葉ですが、単なる買い物ではなく、私たちの未来に深く関わる行動です。エシカル消費への取り組みは、環境負荷の削減や公正な労働環境を支援し、地域社会を活性化させる役割を担っています。

本記事では、エシカル消費の具体的な内容や重要性、自治体や企業の取り組み事例を紹介しつつ、私たち一人ひとりがどのようにして持続可能な社会に貢献できるのかを考えていきます。

INDEX

1.エシカル消費とは

エシカル消費とは、人・社会・地域・環境に配慮した消費行動のことです。さらに、SDGsのゴール12に関連する取り組みでもあります。具体的な内容について詳しく解説します。

(1)消費者庁の概念

消費者庁では、エシカル消費について以下のように定義しています。

消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うこと。

引用:消費者庁 エシカル消費とは

わかりやすく言えば、「社会、環境、人々に配慮した商品を優先的に購入する」ことです。

具体的には、公正な労働環境の提供や環境負荷の削減、社会的課題の解決を含む行動などが該当します。

配慮の対象や具体的な商品は、それぞれ以下の通りです。

分類配慮の対象具体例
障害者の支援につながる商品パンやパウンドケーキ、クッキーなどの焼き菓子ポーチやアクセサリーなどの小物雑貨キッチン用品 など他多数
社会フェアトレード商品寄付付きの商品コーヒー豆、カカオ、紅茶バナナ、オレンジ等の果物オイル、花 など
地域地産地消災害地産品地元漁港で水揚げされた水産品地元の山林で採取された山菜やキノコ類能登の「輪島塗」や日本三大魚醤の「いしる」など
環境エコ商品リサイクル製品資源保護等に関する認証商品ネイキッドパッケージ(未包装状態)の商品ペットボトルやアルミ缶のリサイクル商品FSC(森林管理協議会)認証の紙パックや紙ストローエコマークの再生紙など

エシカル消費は、持続可能な社会を実現させるために必要な取り組みです。高度成長期に活躍した高齢者や現代の働き世代だけでなく、未来を担う子供世代にも消費行動が求められています。

世界中の人々がエシカル消費に取り組めば、地域経済の支援や環境保全を促進し、循環型社会の実現にも寄与します。

循環型社会に関する内容は、以下の記事で詳しく解説しています。

(2)SDGsのゴール12とは

エシカル消費は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のゴール12「つくる責任、つかう責任」に密接に関連しています。

ゴール12の目標は「生産者も消費者も、地球環境と人々の健康を守れる責任ある行動をとる」ことです。

主に、廃棄物削減や資源の効率的な有効利用など、持続可能な社会の実現を目指すものであり、特に生産者と消費者の連携が重要視されています。

具体的には、環境に配慮した製品やサービスの提供、障害者の方が作った商品の販売促進および優先的購入などと定義されています。

エシカル消費に取り組めば、SDGsの目標達成にも寄与し、環境負荷の軽減や資源枯渇問題、地球温暖化対策にも貢献できます。

2.エシカル消費の軸となる3つの配慮

エシカル消費は、3つの軸となる配慮が存在します。それぞれの配慮について以下で解説します。

(1)人・社会への配慮

エシカル消費では、商品が社会や人々に与える影響を重視します。たとえば、障害者の方が作った商品や発展途上国における児童労働を排除した商品などが挙げられます。

具体的には、障害者支援施設で障害者の方が作った商品や、障害者支援に力を入れている企業の商品です。

また、発展途上国では、低賃金労働による貧困や教育現場へのアクセスの悪さなど、社会的格差が原因となり、教育を受けられない児童がいます。

教育を受けられない児童は、家計を助けるために働いており、児童労働は国際問題に発展しています。エシカル消費を推進し、児童労働を排除した商品を積極的に購入すれば、児童労働の削減に貢献できます。

エシカル消費は、消費者が公平で責任ある消費行動を取ることで、社会的に弱い立場にある人々の自立支援にもつながります。

(2)地域への配慮

地域への配慮は、地産地消や災害地の特産品など、地域に馴染み深いものを積極的かつ優先的に購入すれば実現可能です。

地元地域で採れた作物や水産品などを優先的に購入すれば地元経済の活性化につながり、地域コミュニティの持続可能性も向上します。

さらに、地元の文化や資源を尊重した消費行動は、地域特有のアイデンティティを守り、地域経済と文化の保護にも寄与します。

(3)環境への配慮

エシカル消費に重要な環境への配慮は、環境に優しい素材や製品を優先的に選び、購入することです。環境に配慮した商品は「エシカル商品」とも呼ばれ、エコ商品やリサイクル商品などが該当します。

再利用可能な商品の有効活用は、リサイクル活動を推進し、エシカル消費行動を通じて環境負荷を軽減します。
さらに、エネルギーの効率的な使用は、新たな化石燃料の採掘を抑制し、環境負荷を軽減できます。また、廃棄物削減に寄与する行動は、地球温暖化を防ぎ、持続可能な形で地球環境を維持するためにも重要です。

リサイクルに関する詳細は、以下の記事で詳しく解説しています。

3.エシカル消費への取り組みが求められる理由

近年、エシカル消費に注目が集まっていますが、なぜ、エシカル消費への取り組みが必要なのか重要性について解説します。

(1)持続可能な社会の実現

エシカル消費は、持続可能な社会を実現するために重要な役割を果たします。
現在、環境破壊や資源の枯渇といった地球規模における課題が深刻化しています。そこで求められるのが、環境に配慮した消費者の行動です。

消費者1人の力は小さくても、世界中の人々が同じ認識を持ち、エシカル消費の行動を取ることで大きな力となり、持続可能な社会の実現が期待できます。

企業も同じで、特定の企業だけが取り組んでも大きな成果は得られません。企業間の連携を強化し、多方面からエシカル消費に取り組めば、地域経済の活性化や環境負荷の軽減にも貢献できます。

人や環境、地域経済への配慮など、エシカル消費によって持続可能な未来を築くには、私たち全員がエシカル消費の重要性を認識することが大切です。

さらに、エシカル消費は、循環型経済(サーキュラーエコノミー)に関連する重要な取り組みでもあります。企業や自治体がエシカル消費に取り組むことで、天然資源の有効活用や廃棄物処理による温室効果ガスの排出量削減などを推進できます。

サーキュラーエコノミーに関する詳細は、以下の記事で解説しています。

(2)SDGsの目標達成

エシカル消費は、SDGs(持続可能な開発目標)のゴール12「持続可能な生産と消費パターンの確保」を達成する上で欠かせない行動です。

特に、食品ロスの削減や再利用可能な資材の活用など、企業や自治体、消費者が実践できる具体的な取り組みが多く含まれています。

エシカル消費の行動推進は、SDGsのゴール12だけでなく、他のSDGsの目標達成にも貢献できます。

エシカル消費の推進は、地球規模の持続可能な発展を目指す取り組みそのものともいえます。

4.エシカル消費を推進する企業の具体例

エシカル消費の具体例として、東京・大阪の自治体と主な企業に分けてご紹介します。

(1)東京都

①東京都エシカル消費普及啓発

東京都では、令和2年10月に「東京都エシカル消費普及啓発」と題し、エシカル消費の普及啓発に取り組みました。
都内46店舗のスーパーマーケットで関連商品の特設コーナーを設置し、ポスター掲示やチラシ配布、動画広告を実施しています。

その他にも、無地のエコバッグと布描きクレヨンを配布し、自宅でオリジナルエコバッグを作成する取り組みも行われました。

さらにキャンペーンサイトでは、エシカル消費の行動例やクイズを掲載しました。アンケート回答者には、抽選で福祉ショップ「KURUMIRU」のグッズをプレゼントしています。

この活動は、エシカル消費の楽しさを広め、持続可能な社会の実現に向けた意識向上を目指す取り組みとして効果を得ています。

(参考元:消費者庁 みんなのエシカル消費詳細

②消費生活親子バス見学会

東京都東村山市では、令和5年7月に親子を対象に「消費生活親子バス見学会」を実施しました。このイベントは、地産地消やリサイクル推進、エシカル消費を学ぶことが目的です。

参加者は、地産地消として地元の農家でブルーベリーの摘み取り体験をしました。さらに、ごみ処理施設では、リサイクルへの取り組み内容を見学し、環境問題への理解を深めています。

また、JAXA調布宇宙航空センターの見学では、地球環境を考える視点を学んでいます。イベントを通じて、親子で楽しみながらエシカル消費を考えるきっかけを提供しています。

(参考元:消費者庁 みんなのエシカル消費詳細

③エコバッグシェアチャレンジ

消費者庁は、令和2年9月に「エコバッグシェアチャレンジ」と題し、家庭で眠っているエコバッグのシェアリングにより、プラスチックを削減させるイベントを開催しました。

このイベントは、特設会場に家庭で眠っているエコバッグを提供し、必要とする人が自由にエコバッグを利用できます。多くの人がエコバッグを利用すれば、レジ袋の使用量とごみ排出量を削減する効果があります。企業や自治体が抱える廃棄物処理問題や環境問題への取り組みとして有効な啓発活動です。

(参考元:消費者庁 みんなのエシカル消費詳細

(2)大阪府

①「もったいないやん へらそう食品ロス」ポータルサイトの開設

大阪府では、令和4年3月から食品ロス削減を目的とした「もったいないやん へらそう食品ロス」ポータルサイトを開設しています。

ポータルサイトでは、家庭や学校で活用できるカードゲームや授業用スライドなどを提供し、楽しく学びながら食品ロスについて理解を深めるサポートをしています。

また、市町村やNPOが主催するイベントでも活用されており、幅広い層に食品ロス削減の重要性を伝えています。この取り組みは、環境への配慮やSDGsの目標達成に貢献し、地域全体で持続可能な消費を推進するためにも重要な取り組みです。

(参考元:消費者庁 みんなのエシカル消費詳細

②大阪エコバッグ運動 ・ フードドライブ

大阪市では、「大阪エコバッグ運動」と「フードドライブ」を通じて、環境問題や食品ロス削減に取り組んでいます。「大阪エコバッグ運動」とは、レジ袋をもらわない行動を推進し、プラスチックごみ削減や地球温暖化防止を目指す取り組みです。

一方、「フードドライブ」とは、家庭で余った未開封の食品を福祉団体や生活支援が必要な人々に無償で提供する活動です。この2つの取り組みは、限りある資源の有効活用や地域社会への貢献が目的であり、持続可能な消費行動を広める重要な役割を果たしています。

(参考元:消費者庁 みんなのエシカル消費詳細

③大阪府消費者フェア2022

大阪府消費者センターとイベント実行委員会がタッグを組み、大阪府消費者フェア2022をウェブ開催しました。
大阪府消費者フェア2022は、持続可能でより良い社会の実現を目指した取り組みであり、消費者団体や事業団体、行政などが連携して開催されたイベントです。

イベントでは、地産地消や食品ロス削減など、エシカル消費に関する情報をウェブ上で紹介しました。参加者は、消費生活に役立つ知識や持続可能な暮らしのアイデアを学べます。

この取り組みは、地域全体でエシカル消費を広める重要な機会となっています。ウェブ閲覧者数は4,178人に達しており、持続可能な社会の実現に向けた啓発活動として大きな成果を上げています。

(参考元:消費者庁 みんなのエシカル消費詳細

(3)企業の取り組み事例

①ENEOS株式会社

ENEOS株式会社は、潤滑油の安定供給を目指し、国際競争力を高める取り組みを推進しています。
近年の国際情勢や自然災害による原材料不足に対応すべく、代替処方(潤滑油のレシピ)の開発や効率化を進めています。

また、潤滑油の製造では、植物由来基油や再生ベースオイルを採用した低炭素商品を開発し、環境負荷の軽減を図っています。廃潤滑油を活用した再生プロセス構築を進めるなど、循環型社会への貢献を目指しています。

同社の取り組みは、持続可能な社会の実現と顧客への安定供給を両立させることが目的です。

(参考元:消費者庁 マイエシカル消費

②エプソン販売株式会社

エプソン販売株式会社は、環境負荷を軽減するためにデジタル捺染機「Monna Lisa」を開発し、サステナブルなファッションに貢献しています。

デジタル捺染技術は、従来の染色工程に比べて水使用量を約96%削減し、省エネルギーかつ低コストでの生産が可能です。また、顔料インクの使用により幅広い素材に対応でき、環境保護と効率的な生産を両立しています。

さらに消費者が、個別にデザインやサイズを選べる「Virtual Personal Order」を導入しており、大量生産・大量廃棄を抑制する取り組みを進めています。エプソン販売株式会社は、染色プロセスの活動を通じて、持続可能な社会の構築を目指しています。

(参考元:消費者庁 マイエシカル消費

③株式会社プレス・オールターナティブ

株式会社プレス・オールターナティブは、フェアトレードを超えた「コミュニティトレード」を推進し、生産者と対等なパートナーシップを築いています。

スリランカのスパイス製品や台湾の無農薬茶、フィリピンの紙製品など、地域の課題解決と持続可能な生産を目指した取り組みを展開しており、直接生産者と対話する「顔の見える関係」の取り組みを通じて、生産者の生活安定や地域の誇りを育む活動も継続しています。

また、日本国内では、耕作放棄地を活用したお茶づくりや障害者アーティストとのコラボ商品「Artisanシリーズ」による社会的包摂を促進しています。

フェアトレードに関する取り組みは、地域と共に成長できる環境づくりを目指しています。

(参考元:消費者庁 マイエシカル消費

④株式会社斗々屋

株式会社斗々屋は、日本初のゼロ・ウェイストショップを展開中で、ゴミを出さない買い物体験を提供しています。

量り売りやデポジット容器の活用により、使い捨て包装を排除し、環境負荷を軽減しています。さらに輸入に関しても、個包装から大きい量をそのまま輸入するスタイルに切り替え、ごみの排出量削減と生産者の負担軽減を図っています。

また、お客の利便性を向上させるため、最先端技術を導入しています。容器重量の自動計測や野菜・果物を秤に置くだけで種類を特定できるAI秤により、利便性と環境への配慮を両立した店舗運営を可能にしています。

取扱商品もオーガニックやフェアトレード商品が中心となり、直営店の拡大だけでなく、ゼロ・ウェイストショップ開業講座や企業向けコンサルティングなど、循環型社会の構築や持続可能な消費を促進しています。

(参考元:消費者庁 マイエシカル消費

⑤日本マクドナルド株式会社

日本マクドナルド株式会社は、エシカル消費とサステナビリティの推進に取り組んでいます。食品廃棄を削減すべく、注文後に調理する「メイド・フォー・ユーシステム」を導入して廃棄量が半減しました。

今まで使用済みフライオイルは廃棄するのが一般的でしたが、飼料にリサイクルすることで資源の有効活用を推進しています。

さらに、FSC認証紙やMSC認証魚、レインフォレスト・アライアンス認証コーヒー豆など、積極的に持続可能な原材料調達に取り組んでいます。

また、プラスチック削減や「マックでおもちゃリサイクル」など、消費者が参加できる取り組みも展開しており、あらゆる活動を通じて持続可能な社会の実現を目指しています。

(参考元:消費者庁 マイエシカル消費

5.まとめ

エシカル消費は、人・社会・地域・環境に配慮した消費行動であり、持続可能な社会の実現に向けた重要な取り組みです。

消費者一人ひとりが環境や社会への影響を考慮した正しい選択をすれば、環境負荷の軽減や地球温暖化抑制に貢献できます。また、企業や自治体がエシカル消費に取り組み、啓発活動を行うことで消費行動が促進されます。

監修

循環型社会を目指す最先端の取組をキャッチするメディア「サーキュラーエコノミートレンド」の編集部です!

INDEX