製造業や建設業、エネルギー関連産業など、多くの分野で日々大量の廃棄物が発生しており、産業廃棄物の適切な処理やリサイクルが求められています。
この記事では、産業廃棄物の現状や種類、具体的な対策事例について解説します。
1.産業廃棄物とは?

適切な処理が行われない場合、環境への悪影響や地域社会への負担を引き起こすリスクがありますが、産業廃棄物は再資源化やエネルギー回収の観点から、貴重な資源として活用できる側面も持っています。
ここでは、産業廃棄物の定義や分類について詳しく解説します。
(1)産業廃棄物を簡単に解説
産業廃棄物は、以下の3つのカテゴリに分けられます。それぞれの分類によって、処理方法や管理基準が異なります。
あらゆる事業活動にともなうもの | 業種に関わらず発生する廃棄物 |
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特定の事業活動にともなうもの | 特定の業種や活動で発生する廃棄物 |
特別管理産業廃棄物 | 特別な管理が必要な廃棄物 |
以下では、それぞれの分類について具体例を交えながら詳しく解説します。
①あらゆる事業活動にともなうもの
あらゆる事業活動にともなうものは、業種に関わらず発生する産業廃棄物を指します。例として以下のような廃棄物が含まれます。
紙くず | オフィスから発生するもの |
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廃プラスチック | オフィスの紙くずや製造現場で使用される紙類 |
金属くず | 製造業や解体作業などで出る金属くず |
ガラスくず、陶磁器くず | 製造現場や建設現場で発生するもの |
木くず | 建設現場や家具製造業などで出るもの |
②特定の事業活動にともなうもの
特定の事業活動にともなうものは、特定の業種や作業プロセスに関連して発生する廃棄物で、処理基準や規制が業種ごとに異なることが特徴です。以下は具体例です。
内容 | 具体例 |
---|---|
コンクリートがら | 建物や橋梁の解体現場で発生するコンクリートの破片、鉄筋コンクリートの切断くず、道路の改修工事で発生するコンクリートブロックの破片、基礎工事の余剰コンクリートなど |
アスファルトくず | 道路工事や修繕工事で発生するアスファルト廃材、高速道路の舗装撤去時に出るアスファルト塊、駐車場の舗装補修工事で発生するアスファルト片、劣化したアスファルトシングル屋根材など |
汚泥 | 工場の排水処理過程で発生する泥状の廃棄物、食品加工工場から出る有機汚泥、建設工事の掘削作業で発生する土砂混じりの泥、金属加工業で発生する研磨スラッジ、染色工場の排水処理による沈殿汚泥、製紙工場で発生するパルプ廃泥など |
廃油 | 機械の潤滑油や燃料油の使用後の廃棄物、自動車整備工場で発生する使用済みエンジンオイル、金属加工工場で排出される切削油や防錆油、発電所のタービンオイル、工場の圧縮機や変圧器の使用済み油など |
ばいじん | 焼却炉やボイラーから発生する粉じんや灰、火力発電所の燃焼灰(フライアッシュ)、セメント工場で発生するばいじん、製鉄所の高炉や転炉から排出される粉じん、都市ごみ焼却施設で発生する飛灰、石炭火力発電所の石炭燃焼灰など |
③特別管理産業廃棄物
特別管理産業廃棄物とは、毒性・爆発性・感染性・腐食性などの危険性が高い廃棄物 であり、適正な処理と厳格な管理が求められます。これらの廃棄物は環境や人体への影響が大きいため、一般の産業廃棄物とは区別され、特別な処理方法が義務付けられています。
廃PCB等 | 変圧器、コンデンサ、安定器に含まれるPCB汚染物、PCB含有油、PCBを使用した電気機器、PCB汚染ウエス(拭き取り布)など |
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廃水銀等 | 水銀を含む蛍光灯、水銀電池、体温計、血圧計、歯科用アマルガム、実験用水銀、化学工場で使用された水銀触媒など |
廃石綿(アスベスト) | 吹付け石綿(スプレー塗布された断熱材)、スレート(波型の屋根材・外壁材)、石綿含有断熱材(ボイラーや配管の保温材)、石綿含有ガスケット・パッキン、アスベストを含む建築資材(古い天井材・壁材)など |
感染性廃棄物 | 医療機関や研究施設から排出される感染リスクのある廃棄物(注射針、点滴チューブ、血液・体液が付着したガーゼ・脱脂綿・手袋、使用済み注射器、手術で取り除かれた組織片、培養廃棄物、感染症患者の使用済みマスクや防護服など) |
特定有害産業廃棄物 | シアン化合物、鉛・カドミウム・ヒ素・クロムなどの重金属を含む廃棄物、ダイオキシン類を含むばいじん、農薬の廃液、強酸・強アルカリの腐食性廃液など |
特別管理産業廃棄物は、適切な管理を怠ると重大な環境汚染や健康被害を引き起こす可能性があるため、専門業者に委託して処理することが求められます。
(3)産業廃棄物一覧20種類
廃棄物処理法では、産業廃棄物を以下の20種類に分類しています。具体例を以下の表にまとめました。
種類 | 具体例 |
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廃プラスチック類 | ビニール袋、ポリエチレン製品、発泡スチロール、プラスチック製の容器・包装材、農業用マルチフィルム、自動車部品(バンパー・ダッシュボード)、PETボトルの破片、使い捨てプラスチック製品(カップ・ストロー・カトラリー)など |
金属くず | 鉄くず、アルミくず、銅線、ステンレス片、金属製加工くず、使用済み鉄筋、アルミホイールの破片、ブリキ缶のスクラップ、電線の被覆除去後の銅線、廃棄された機械部品・工具など |
汚泥 | 建設工事や製造工程で発生する泥、染色廃液の沈殿物、金属加工スラッジ、食品加工工場から排出される有機汚泥、化学工場の排水処理過程で発生する沈殿物、紙パルプ産業の排水から発生するヘドロなど |
紙くず | 印刷工程で発生する紙片、段ボールくず、製本作業時の端材、新聞社・出版業界で発生する裁断くず、オフィスから排出される不要なコピー用紙、シュレッダー処理後の細断紙、紙パルプ工場の製造工程で出る紙粉など |
木くず | 木材の切れ端、製材くず、建築現場の廃材、パレット破片、解体工事で発生する木造住宅の廃材、家具製造過程で生じる端材、伐採木の枝や幹、廃棄された木製パレット・梱包材など |
鉱さい | 鉄鋼製造時のスラグ、非鉄金属精錬時の残渣、銅製錬の際に発生する鉱滓、アルミ精錬で発生する赤泥、セメント製造時の副産物、ボイラー灰、炉内スラグなど |
石綿含有廃棄物 | アスベストを含む断熱材、耐火材、吹付け石綿、アスベストを含む古い屋根材・壁材、ブレーキパッドの粉じん、建築物解体時に発生するアスベストボード、石綿含有パッキン・ガスケットなど |
2.産業廃棄物の処理における事業者の責任とルール

産業廃棄物の処理は、法律(廃棄物処理法)で明確に規定されており、排出事業者には廃棄物の適正な処理を行う責任があります。
排出事業者とは、事業活動の中で廃棄物を排出する企業を指し、発生した廃棄物が最終処分されるまで、一貫した管理責任を負う必要があります。
以下では、排出事業者が守るべき基準や手続きについて解説します。
(1)排出事業者の責任とは
排出事業者は、産業廃棄物を適正に処理する責任を負い、処理基準を遵守しなければなりません。これに違反した場合、罰則が科される場合があります。
収集運搬基準と処分基準は主な責任と基準を、以下で詳しく解説します。
①収集運搬基準
収集運搬基準では、産業廃棄物を適切に収集・運搬するための安全管理が求められます。
産業廃棄物は漏れや飛散が発生しないように、厳格な取り扱い基準を守る必要があります。たとえば、廃棄物は種類ごとに適切な容器や梱包資材を使用し、しっかり密閉することが推奨されます。
参考:収集運搬基準(政令第 6 条第 1 項、第 6 条の 5 第 1 項)|産業廃棄物処理事業振興財団
②処分基準
処分基準では、産業廃棄物を環境に負荷をかけずに処理するために、法律で定められた適切な方法を厳守する必要があります。
産業廃棄物の処分方法は、その廃棄物の種類や性質に応じて異なります。
可燃性の廃棄物であれば焼却処理が求められる場合がありますが、その際は大気汚染防止装置や有害物質除去設備を備えた処理施設で行われなければなりません。
一方、埋め立てが必要な廃棄物については、許可を受けた最終処分場での処理が義務付けられています。
参考:処分基準(中間処理:政令第 6 条、第 6 条の 5)|産業廃棄物処理事業振興財団
(2)委託基準
委託基準は、廃棄物処理の適正化を図るための重要なルールであり、違反した場合には排出事業者も法的責任を問われる可能性があります。
委託基準として、都道府県または政令市の許可を得た業者を選定することと、適正な契約の締結が挙げられます。
以下で詳しく解説します。
①許可を受けた業者への委託
廃棄物処理法では、排出事業者には自己処理責任が課されているため、委託後も責任を免れることはできません。
もし処理業者が産業廃棄物を不法投棄した場合、その責任は排出事業者にも及びます。
許可を受けた処理業者は、廃棄物の種類や処理方法に応じて異なるライセンスが必要となるため、以下のポイントを参考にライセンスの有無などを確認しましょう。
許可証の確認 | 処理業者が発行する産業廃棄物収集運搬業許可証や産業廃棄物処分業許可証を確認する |
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許可の範囲 | 業者が許可を受けている産業廃棄物の種類が、依頼する廃棄物に該当しているか確認する |
優良な業者かどうか | 自治体やインターネットで過去に行政指導や違法行為が行われていないかを確認する |
排出事業者は、業者の許可証の確認や実績調査を怠らず、信頼性の高い業者を選定することで、環境負荷の軽減や事業リスクの回避につなげることができます。
適正な契約の締結
処理業者に廃棄物の処理を依頼する際には、適正な契約の締結が求められます。この契約には、以下のような内容を明記する必要があります。
- 処理業者の名称や所在地
- 委託する廃棄物の種類と数量
- 処理方法や処理に要する費用
- 収集運搬および最終処分の責任範囲
契約を明確にすることで、処理業者との責任の所在を明らかにし、トラブルを未然に防ぐことができます。また、契約書を交わさずに廃棄物処理を委託することは、法律違反とみなされる可能性があるため注意が必要です。
排出事業者は、契約後も委託した廃棄物が適切に処理されているかを確認する義務があります。これは、廃棄物処理が最終処分まで適正に行われたことを担保するためであり、必要に応じて処理業者から報告書を受け取ることが推奨されます。
(3)マニフェストの作成
産業廃棄物の適正な処理を確実にするため、排出事業者はマニフェスト(産業廃棄物管理票)を作成し、廃棄物の流れを記録・管理する義務があります。
以下でマニフェストの記載事項と管理方法について解説します。
記載事項
マニフェストには、以下の情報を正確に記載する必要があります。
排出事業者の名称および所在地 | 廃棄物を排出した企業の情報を明記 |
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廃棄物の種類と数量 | 処理する廃棄物がどの種類に該当し、どれくらいの量であるかを具体的に記載 |
収集運搬業者および処分業者の情報 | 委託先となる業者の名称や所在地、許可番号を明示 |
処分方法 | 廃棄物を焼却、埋立て、再資源化など、どの方法で処理するのかを明記 |
運搬・処分の完了報告 | 収集運搬および処分が完了したことを証明する情報を業者から受け取り記録 |
マニフェストは上記の情報をもとに、廃棄物が適正に収集、運搬、処理されていることを確認します。
管理と保管
作成したマニフェストは、法律に基づき一定期間(通常は5年間)保管する義務があります。これにより、廃棄物処理に関するトレーサビリティ(追跡可能性)が確保され、後から適正な処理が行われたかを確認できるようになります。
不適正な処理が明らかになれば、排出事業者にも法的責任が問われる可能性があるため、正確な記録と保管が必要です。
また、従来の紙マニフェストに加え、現在では「電子マニフェスト」の活用も進んでいます。電子マニフェストを利用することで、以下のメリットがあります。
業務効率の向上 | 手書きや紙面での管理に比べ、データ入力や管理が簡便化 |
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記録の正確性 | 入力ミスの軽減や情報の一元管理が可能 |
リアルタイム確認 | 収集運搬や処分の進捗状況をオンラインで確認でき、適正処理を早期に確認 |
環境負荷の削減 | 紙の使用を削減することで、環境負荷を軽減 |
電子マニフェストは、日本産業廃棄物処理振興センター(JWN)が提供するシステムを通じて利用可能で、法定のマニフェスト管理として認められています。
企業規模や業務量に応じて導入を検討することが推奨されます。
(4)建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理責任
建設業では、解体工事や新築工事、リフォーム工事などの過程で、大量の産業廃棄物が発生します。これらの廃棄物の適正な処理は、排出事業者に該当する建設業者に課せられた重要な責任です。
不適切な処理や違法投棄が行われた場合、環境汚染や法的トラブルを引き起こす可能性があるため、廃棄物処理法に基づく徹底した対応が求められます。
建設工事に伴い発生する主な廃棄物は、以下のようなものが挙げられます。
コンクリートがら | 建物や構造物の解体工事で発生するコンクリートの破片、橋梁・トンネルの補修工事で出るコンクリート廃材、鉄筋コンクリートの切断くず、基礎工事で不要となったコンクリート片、工事ミスによる余剰コンクリートブロックなど |
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アスファルトくず | 道路工事や舗装の解体時に発生する廃材、古いアスファルト舗装の切削材、駐車場の舗装撤去時に出るアスファルト片、空港滑走路や高速道路の補修工事で発生するアスファルト破片など |
木くず | 建設現場で使用される木材の端材、解体時に出る木片、建築資材の切断くず、仮設足場や型枠の使用後に残る廃木材、不要になった木製パレットや梱包材、リフォーム工事で発生する廃材(フローリング・柱など) |
汚泥 | 地盤改良工事や排水処理の過程で発生する泥状廃棄物、掘削工事で出る土砂混じりの泥、コンクリート製造時の洗浄水の沈殿物、塗装工事や研磨作業で発生するスラッジ、建設現場の排水処理で出るヘドロなど |
金属くず | 鉄筋や配管、金属製の建築部材の加工時に出る切れ端、アルミサッシの廃材、ステンレス製の手すりやフェンスの解体後の廃材、エレベーターや階段手すりの金属スクラップ、解体工事で発生する鉄骨や鋼材くずなど |
廃石膏ボード | 内装工事や解体作業で発生するボードの破片、新築・リフォーム時の壁や天井の施工ミスによる余剰ボード、建設現場でカットされた石膏ボードの端材、防音・断熱用途で使用されたボードの解体廃材など |
建設業における廃棄物の処理は、分別やリサイクル、適正な処理施設の利用、運搬時の管理徹底といった基本的な対策を講じることで、持続可能な建設事業の実現につなげることができます。
3.産業廃棄物の処理方法

埋立処分場の限界や廃棄物がもたらす環境リスクを考えると、リサイクルを最大限活用し、資源循環を促進することが求められます。
産業廃棄物の適切な処理は、処理プロセスは、「分別・保管」「収集・運搬」「中間処理」「再生処理・最終処分」の4つの段階に分けられます。それぞれの段階について詳しく解説します。
(1)分別・保管
廃棄物は、廃棄物処理法に基づいて種類ごとに分別し、リサイクルや適切な処理が可能な状態にする必要があります。分別を怠ると、処理工程が複雑化するだけでなく、リサイクルが困難になり、結果的に処理費用が増加するリスクがあります。
分別後、産業廃棄物は種類に応じた適切な容器や施設で保管しなければなりません。大まかな分類と保管方法は以下が挙げられます。
液体廃棄物 | 漏洩や飛散を防ぐために密閉容器に保管 |
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可燃性廃棄物 | 火気のない専用エリアに保管 |
不燃性廃棄物 | 安全に積み上げられるスペースで管理 |
廃棄物を発生源で分別・保管することで、後続の収集・運搬や中間処理が効率化され、最終処分やリサイクルの質も向上します。
(2)収集・運搬
産業廃棄物の収集・運搬における廃棄物処理法に基づく基準が存在し、特に重要なのは、廃棄物の性質に応じた取り扱いと安全対策です。
たとえば、液体廃棄物や粉体廃棄物は専用の密閉容器に収納し、漏洩や飛散を防止します。廃棄物が腐食性や毒性を有する場合は、耐腐食性や耐圧性を備えた容器を選ぶ必要があります。
運搬容器や車両に廃棄物の種類、性質、数量を記載したラベルを貼付し、関係者が廃棄物の内容を正確に把握できるようにすることで、不測の事態への迅速な対応が可能になります。
(3)中間処理
中間処理は、廃棄物の性質や形状を処理しやすくするだけでなく、環境負荷を軽減し、資源としての再利用可能性を高める重要なプロセスです。
中間処理に用いられる方法は、以下のものがあります。
中間処理の方法 | 概要 |
---|---|
焼却 | 可燃性廃棄物は焼却施設で高温処理され、体積の減少と有害物質を分解して無害化する効果も期待される |
破砕 | 金属くずやコンクリートがらなどの廃棄物は、破砕してから素材ごとに分けられ、再利用される場合が多い |
脱水 | 汚泥などの水分を多く含む廃棄物は、脱水することで輸送や最終処分が効率的に |
溶融 | ガラス質のスラグや金属は高温で廃棄物を溶かすことで、道路資材や建築材料などとしてリサイクルされる場合がある |
選別 | 金属、プラスチック、ガラスなどの素材ごとに分けることで、効率的なリサイクルを促進 |
中間処理の目的は、廃棄物を最終処分に適した状態に加工するだけでなく、資源として再利用できる可能性を最大化することです。
適切に選別・加工された廃棄物は、再生素材として新しい製品の原料になるだけでなく、エネルギーとして利用されることもあります。
(4)再生処理・最終処分

産業廃棄物の処理において、リサイクル可能な廃棄物は再生処理を行い、資源として再活用されます。
たとえば、廃プラスチックは粉砕・洗浄・再成形を経て、再生プラスチックとしてさまざまな製品の原料として再利用されます。その他にも、廃金属は溶解して新しい金属製品に加工され、紙くずは再生紙の材料として活用されます。
一方で、リサイクルが困難な廃棄物については、最終処分が必要です。
最終処分として最も一般的なのが埋め立て処理であり、廃棄物の性質に応じて適切な処分場で処理が行われます。埋立処分場には以下の二種類があります。
管理型処分場 | 有害物質を含む廃棄物を安全に処分するための施設 |
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安定型処分場 | 環境に無害な廃棄物を処分するための施設 |
管理型処分場では、廃棄物が周囲の環境に悪影響を及ぼさないよう、防水シートや浸出水処理設備が設置されています。これにより、有害物質が土壌や地下水に漏れ出すリスクが防がれます。
安定型処分場では、雨水や地下水と反応して有害物質を出す可能性が低い、比較的安定した性質の廃棄物が埋め立てられます。具体例としては、コンクリートがら、陶器、ガラス、金属くずなどが挙げられます。
埋め立て地の確保が限られている現代では、廃棄物の再生利用を優先し、最終処分に頼らない仕組みを構築することが求められています。
これにより、限られた資源の循環利用を促進し、持続可能な廃棄物管理を実現することが可能です。
4.産業廃棄物に関する罰則

産業廃棄物の処理に関しては、環境保護と公衆衛生の維持を目的として、厳格な法律が定められており、適正な処理を行わずに違反を犯した場合、事業者や関係者に対して罰則が科されます。
ここでは、産業廃棄物に関する罰則を解説します。
(1)排出事業者と法人に関わる罰則
排出事業者と関わる法人には、廃棄物処理法に基づく適正処理の責任が課されています。この責任を怠ると、廃棄物処理法第25条・第26条の違反として以下の罰則が科されることになります。
違反内容 | 個人に対する罰則 | 法人に対する罰則 |
---|---|---|
廃棄物の投棄禁止違反 | 5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、またはその両方 | 最大3億円以下の罰金 |
委託基準違反 | 5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、またはその両方 | 最大3億円以下の罰金 |
処理基準違反 | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金 | 最大3,000万円以下の罰金 |
産業廃棄物処理に関する違反は、排出事業者だけでなく、法人やその代表者にも責任が及ぶことがあります。
法人が廃棄物処理法に違反した場合、法人全体の管理責任を厳しく追及するものとして最大3億円の罰金が科されます。
さらに代表者や管理責任者が違反行為を指示、黙認、または認識していた場合には1年以上の懲役や、重い罰金が科されることがあります。
(2)マニフェストに関する違反
産業廃棄物の流れを管理するためのマニフェスト制度も厳格に規定されており、この制度に基づき、排出事業者は廃棄物の種類、処分方法、運搬業者、処分業者の情報を正確に記録する必要があります。
マニフェストの虚偽記載や作成義務違反は、廃棄物処理法第27条の2によって、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。法人が関与した場合も、同額の罰金が科されます。
(3)建設現場における特定違反
建設現場外で廃棄物を保管する場合、基準に違反すると廃棄物処理法第29条によって、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。
建設現場で発生する産業廃棄物の処理に関する違反も保管基準違反とみなされるため、廃棄物の種類にあわせた保管方法を確認することが重要です。
(4)その他の違反行為と罰則
その他の違反行為と罰則は、以下のとおりです。
違反内容 | 詳細 | 罰則 |
---|---|---|
報告義務違反(第30条) | 廃棄物の処理に関する情報の報告を怠った | 30万円以下の罰金 |
技術管理違反(第30条) | 廃棄物の適切な管理責任者を配置しなかった | 30万円以下の罰金 |
多量排出事業者の計画・報告義務違反(第33条) | 多量の廃棄物を排出する事業者が計画の提出や報告義務を怠った | 20万円以下の罰金 |
また、産業廃棄物の処理に関わる法令や基準は改定される場合があるため、常に最新の情報を把握し、対応を怠らないことが重要です。
5.産業廃棄物のリサイクルに関する事例

産業廃棄物は最終処分だけでなく、再生処理によって再利用させることも可能です。
ここでは、製造業・建設業・自動車産業・電子機器業界 など、さまざまな分野での産業廃棄物リサイクルの成功事例を紹介します。
(1)廃プラスチックの⾼品位リサイクルの実現

画像引用:https://www.kansai.meti.go.jp/1-9chushoresearch/jirei/210728jirei.pdf
株式会社近江物産は、廃プラスチックのリサイクル技術を活用し、高品質な再生プラスチックの製造を行っています。
同社では、工場や産業現場から排出される廃プラスチックを独自の技術で粉砕・洗浄し、異物を徹底的に除去することで、高純度な再生原料を生産しているのが特徴です。
これにより、リサイクル素材でありながら品質の安定した製品の供給が可能となり、自動車部品や建築資材、家電製品の製造に活用されています。
(2)ペットボトルリサイクルを軸にした商品開発

画像引用:https://www.kansai.meti.go.jp/1-9chushoresearch/jirei/210728jirei.pdf
有限会社ウチダプラスチックは、使用済みペットボトルを再生し、新たな商品開発を進めることで、資源循環の促進に取り組んでいます。
同社では、回収されたペットボトルを細かく粉砕し、高度な精製工程を経てリサイクルペレットを製造開始しました。この再生ペレットは、文房具、包装資材、日用品など幅広い製品の原料として活用されており、プラスチック廃棄物の削減に貢献しています。
(3)⽊材代替製品で資源循環の仕組みを形成

画像引用:https://www.kansai.meti.go.jp/1-9chushoresearch/jirei/210728jirei.pdf
川瀬産業株式会社は、建築現場や製材業界で発生する木材廃棄物をリサイクルし、木材代替製品の製造を行っています。
従来、木材廃棄物の多くは焼却処理されていましたが、同社は廃木材を圧縮・加工し、人工木材として再生することで、森林資源の保全と産業廃棄物の削減に貢献しているということです。
同社の人工木材は、耐久性が高く、湿気や虫害に強い特性を持つため、屋外デッキやフェンス、建築資材などに幅広く活用されています。また、木材チップをバイオマス燃料として利用する取り組みも行われており、化石燃料の代替エネルギー源として注目されているのが特徴です。
これにより、木材廃棄物の再資源化が進むとともに、CO2排出量の削減にもつながっています。
6.まとめ
産業廃棄物の適正な処理は、環境保護と法令遵守の観点から極めて重要です。排出事業者には、適切な分別・保管、許可を受けた業者への委託、マニフェスト管理などの責任が課されており、違反すれば厳しい罰則が科されます。