廃棄物は産業廃棄物と一般廃棄物に分類され、それぞれに適した処理方法が求められます。本記事では、産業廃棄物の定義と処理の流れなどの基本情報をわかりやすく解説します。
さらに、産業廃棄物処理を取り巻く法律や社会問題、複数の事業者が関わる場合の責任分担についてもご紹介します。
1.産業廃棄物とは?

産業廃棄物とは、事業活動に伴って発生する廃棄物のうち、廃棄物処理法で定められた20種類を指します。
ここではまず、産業廃棄物の定義と一般廃棄物との違いを明らかにしたうえで、産業廃棄物に該当しないものについてもご紹介します。
(1)産業廃棄物の定義と一般廃棄物との違い
一般的に呼ばれるゴミは、法律上で産業廃棄物と一般廃棄物の2種類に分類されます。以下の比較表では、産業廃棄物と一般廃棄物の違いをご確認いただけます。
産業廃棄物 | 一般廃棄物 | |
---|---|---|
定義 | 以下のいずれも満たすもの ・事業活動に伴い発生 ・廃棄物処理法で定められた20種類に該当するもの | 産業廃棄物に分類しないすべての廃棄物 |
処理責任 | 排出事業者(発生源での適正処理が義務付けられる) | 市区町村 ※家庭ゴミは市区町村が処理 ※事業系一般廃棄物は 排出事業者も責任を負う |
排出事業者とは?
排出事業者とは、事業活動により廃棄物を発生させる法人または個人のことです。たとえば工場やオフィス、店舗、建設現場などが該当します。排出事業者には以下のような義務があります。
分類と保管 | 汚水が流出しないよう、密閉容器や専用の置き場を設ける | 産業廃棄物か一般廃棄物かを正しく判定し、種類ごとに分別・保管
---|---|
収集運搬の手配 | 委託契約書やマニフェスト(産業廃棄物管理票)を必ず交付・保管 | 自ら処理せずに外部へ委託する場合は、廃棄物処理業の許可を受けた業者に依頼する
適正処理の確保 | 定期的に処理状況をチェックし、必要に応じて改善を指示する | 委託先が法律に沿って処理を行っているか確認し、不法投棄や違法焼却がないよう管理
記録と報告 | 自己の排出量や処理状況を社内で記録し、環境管理の資料として活用する | マニフェストの交付・返送状況を5年間保存し、関係行政機関への報告に備える
産業廃棄物に該当しないものは一般廃棄物に該当

たとえば、事務所で発生する弁当がらやカップ麺の容器は、廃プラスチック類に該当するため産業廃棄物となりますが、食べ残しの残飯や木製の割り箸は一般廃棄物(事業系)となります。
また、産業廃棄物は廃棄物処理法で20種類に限定されているため、粉末状の農薬、錠剤・カプセル剤、粉剤・ペレット、泥状でない食品やペットフードなどの該当しない廃棄物であれば一般廃棄物として処理します。
2.産業廃棄物の具体的な種類と分類
ここでは、産業廃棄物の具体的な種類と分類を解説します。
(3)産業廃棄物20種類一覧と分類
廃棄物処理法では、以下の20種類を産業廃棄物と定めています。具体例とともに以下の表にまとめました。
種類 | 具体例 |
---|---|
廃プラスチック類 | ビニール袋、発泡スチロール、自動車バンパー、PETボトルの破片、使い捨てプラ製品(カップ・ストロー)など |
金属くず | 鉄くず、アルミくず、銅線、ステンレス片、廃機械部品、鉄筋、アルミホイール破片など |
汚泥 | 製造工程の沈殿物、食品加工工場の有機汚泥、金属加工スラッジ、紙パルプ排水ヘドロなど |
紙くず | 印刷工程の裁断くず、段ボールくず、シュレッダー処理紙、オフィスの不要コピー用紙など |
木くず | 建築廃材、製材くず、家具端材、木製パレットの破片、伐採木の枝・幹など |
鉱さい | 鉄鋼スラグ、非鉄金属精錬残渣、アルミ赤泥、ボイラー灰、炉内スラグなど |
石綿含有廃棄物 | 吹付け石綿、アスベスト含断熱材、古い屋根材のアスベストボードなど |
以下では、産業廃棄物の分類を解説します。
①あらゆる事業活動にともなうもの(業種を問わず発生)
あらゆる事業活動にともなうものは、業種に関わらず発生する産業廃棄物を指します。例として以下のような廃棄物が含まれます。
紙くず | オフィスの不要コピー用紙 |
---|---|
廃プラスチック | 事務所のプラスチック製文具 |
金属くず | 工場・解体現場の金属端材 |
ガラスくず、陶磁器くず | 製造現場や建設現場の破片 |
木くず | 家具製造・建築現場の木材端材 |
②特定の事業活動にともなうもの(業種・工程ごとに固有)
特定の事業活動にともなうものは、特定の業種や作業プロセスに関連して発生する廃棄物で、処理基準や規制が業種ごとに異なることが特徴です。以下は具体例です。
がれき類 | 建物・橋梁解体のコンクリートがら、 道路改修のコンクリートブロック破片 |
---|---|
アスファルトくず | 舗装撤去のアスファルト塊、 高速道路補修のアスファルト片 |
汚泥 | 金属加工業の研磨スラッジ、染色工場の沈殿汚泥、 製紙工場のパルプ廃泥 |
廃油 | 自動車整備工場の使用済みエンジンオイル、 工場の切削油 |
廃酸・廃アルカリ | 電気めっき廃液、 化学工場排水処理後の酸・アルカリ液 |
ばいじん | 火力発電所の燃焼灰、都市ごみ焼却施設の飛灰、 製鉄所の高炉粉じん |
特別管理産業廃棄物(PCB廃棄物、医療廃棄物など)
特別管理産業廃棄物とは、毒性・腐食性・感染性・爆発性など、一般の産業廃棄物よりも高い危険性を有する廃棄物です。
PCB含有廃棄物 | 変圧器・コンデンサ・安定器のPCB汚染物、 PCB含有油、PCB汚染ウェス(拭き取り布) |
---|---|
廃水銀等 | 蛍光灯・水銀電池・体温計・血圧計の水銀含有部品、 歯科用アマルガム、実験用水銀、工業用水銀触媒 |
廃石綿(アスベスト) | 吹付け石綿断熱材、スレート屋根・外壁材、 ボイラー保温材のアスベスト含有断熱材、 石綿パッキン |
感染性廃棄物 | 注射針・使用済み注射器、血液・体液付着ガーゼ・ 手袋、手術組織片、培養廃棄物、感染症患者用防護具 |
特定有害廃棄物 | シアン化合物、鉛・カドミウムなど重金属含有廃液、 ダイオキシン含有ばいじん、強酸・強アルカリ廃液 |
特別管理産業廃棄物は環境や人体への影響が懸念されるため、厳格な保管・運搬・処理が法律で義務付けられています。排出事業者は、自ら処理するか、許可を受けた処理業者に必ず委託しなければなりません。
3.産業廃棄物の処理の流れ

産業廃棄物処理は、収集運搬、中間処理、最終処分の3つの段階に分けられます。それぞれの段階の概要と専門業者は以下のとおりです。
処理段階 | 概要 | 専門業者 |
---|---|---|
①収集運搬 | 産業廃棄物の引き取りや運搬 | 収集運搬業者 |
②中間処理 | 廃棄物の減量化、 性状変化を伴う処理を行う | 中間処理業者 |
③最終処分 | 埋め立てなどにより、 廃棄物を安全に処分する | 最終処分業者 |
委託の際は、マニフェストと呼ばれる伝票を用いて、廃棄物の流れを管理し、排出事業者は廃棄物の処理が適切に行われているかを確認する責任があります。以下では、産業廃棄物の処理の流れにおける各段階について解説します。
収集運搬
収集運搬を行うには、廃棄物処理法に基づいた許可が必要です。収集運搬業者の選定には、内容から区分を選定しましょう。
区分 | 内容 | 必要な許可 |
---|---|---|
収集運搬業 (積替え・保管を含まない) | 排出事業者から処理施設へ直接運搬 | 各都道府県または政令市の許可 |
収集運搬業 (積替え・保管を含む) | 途中で集積・保管を行う場合 | 各都道府県または政令市の許可 |
無許可業者による不法投棄などのトラブルを予防するためにも、収集運搬業者に委託する際には許可証の確認を徹底しましょう。さらに委託後は、運搬車両への表示義務や、マニフェスト制度の運用など、法令遵守の徹底も確認することが重要です。
中間処理(破砕、焼却など)
中間処理の主な処理方法として、破砕と焼却が挙げられます。リサイクル促進や運搬効率化を目的に中間処理が行われる場合があります。
処理方法 | 主な用途 |
---|---|
破砕機 | 建築廃材、木材、コンクリート・アスファルトがら など |
焼却処理 | 廃プラスチック類、紙くず、木くず など |
破砕機の場合、建築廃材や木材などには一軸破砕機や二軸破砕機が、より硬質な廃棄物にはハンマー式破砕機などが用いられます。
焼却処理は、廃棄物を燃焼させることで減量化を図る方法であることから、最終処分場に埋め立てる廃棄物の量を大幅に削減できます。また、焼却の際に発生する熱をエネルギーとして利用できる場合もあります。
このように中間処理は、最終処分場の延命化や環境負荷の低減に貢献しています。以下の動画では、中間処理場施設の作業風景をご確認いただけます。
最終処分(埋立など)
産業廃棄物の最終処分は、主に埋立処分で行われます。廃棄物を安全に隔離・保管するため、最終処分場は廃棄物の種類や有害性に応じて以下の3つのタイプに分類されます。
処分場 | 対象廃棄物 | 主な特徴 |
---|---|---|
安定型最終処分場 | 廃プラスチック、金属くず等 | 有害物質を含まない廃棄物 |
管理型最終処分場 | 燃え殻、汚泥、紙くず等 | 基準値以下の 有害物質を含む廃棄物 |
遮断型最終処分場 | 基準値以上の有害物質を含む廃棄物 | 水密性の容器で廃棄物を覆い、 環境から隔離 |
①安定型最終処分場
安定型最終処分場は有害物質をほとんど含まない安定した廃棄物(廃プラスチック類、金属くずなど)を処分します。搬入時には、有害物質が混入していないか厳密に検査されます。
②管理型最終処分場
管理型最終処分場は有害物質は基準値以下でも、溶出や分解による環境汚染のリスクがある廃棄物(燃え殻、汚泥、紙くずなど)を対象とします。遮水壁や集水施設、ガス排気設備などを備え、汚染の拡大を防止します。一般廃棄物もここに埋め立てられます。
以下は、管理型最終処分場の設置許可を巡る裁判に言及する報道動画です。
③遮断型最終処分場
遮断型最終処分場では有害物質濃度が基準値を超え、特に厳重な隔離が必要な廃棄物を処分します。
コンクリート製の水密容器で完全に封じ込め、自然環境と隔離しており、その建設・維持管理は非常に高コストかつ技術的に難しく、全国でも数は限られています。
4.産業廃棄物に関する社会問題
日本は大量生産・大量消費の社会構造の下で、事業活動に伴う産業廃棄物が増え続けています。
サーキュラーエコノミー(循環経済)の導入が叫ばれる一方で、環境汚染や処理施設の逼迫など、未解決の課題が深刻化しています。ここでは、産業廃棄物に関する代表的な社会問題をご紹介します。

(1)最終処分場の不足

日本全国の最終処分場数は平成25年度の1,723箇所から令和4年度には1,573箇所へと150箇所減少し、残余容量も約467万立方メートル、残余年数は約21.6年と逼迫しています。
一方、最終処分場を自前で持たない市区町村は1,741のうち308、全体の17.7%に上り、民間や他自治体への委託に頼らざるを得ない状況です。処分場の偏在と少子高齢化による人口減少が進む中、処分場の確保と廃棄物の減量化・リサイクル強化が急務となっています。
(2)不法投棄

不法投棄の発生件数・投棄量は、平成10年代初頭の年間1,000件超・40万トン台から大幅に減少し、令和元年度には151件・約7.6万トンにまで減少しています。背景には法規制の強化や監視体制の向上が挙げられます。
しかし、依然として1件あたり10トン以上の大規模事案も散発しており、近年では一度の投棄量が20~70トンに及ぶケースも報告されています。こうした大規模不法投棄は、周辺環境への深刻な汚染リスクをはらんでおり、監視の継続と早期発見・摘発が必要です。
以下の動画では、国内最大規模の産廃不要投棄といわれる豊島事件についてご確認いただけます。
5.産業廃棄物に関する罰則

産業廃棄物の処理に関しては、環境保護と公衆衛生の維持を目的として、厳格な法律が定められており、適正な処理を行わずに違反を犯した場合、事業者や関係者に対して以下の罰則が科されます。
(1)排出事業者と法人に関わる罰則
排出事業者と関わる法人には、廃棄物処理法に基づく適正処理の責任が課されています。この責任を怠ると、廃棄物処理法第25条・第26条の違反として以下の罰則が科されることになります。
違反内容 | 個人に対する罰則 | 法人に対する罰則 |
---|---|---|
廃棄物の投棄禁止違反 | 5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、またはその両方 | 最大3億円以下の罰金 |
委託基準違反 | 5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、またはその両方 | 最大3億円以下の罰金 |
処理基準違反 | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金 | 最大3,000万円以下の罰金 |
産業廃棄物処理に関する違反は、排出事業者だけでなく、法人やその代表者にも責任が及ぶ場合があります。
法人が廃棄物処理法に違反した場合、法人全体の管理責任を厳しく追及するものとして最大3億円の罰金が科されます。さらに代表者や管理責任者が違反行為を指示、黙認、または認識していた場合には1年以上の懲役や、重い罰金が科されることがあります。
(2)マニフェストに関する違反
産業廃棄物の流れを管理するためのマニフェスト制度も厳格に規定されており、この制度に基づき、排出事業者は廃棄物の種類、処分方法、運搬業者、処分業者の情報を正確に記録する必要があります。
マニフェストの虚偽記載や作成義務違反は、廃棄物処理法第27条の2によって、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。法人が関与した場合も、同額の罰金が科されます。
(3)建設現場における特定違反
建設現場外で廃棄物を保管する場合、基準に違反すると廃棄物処理法第29条によって、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。
建設現場で発生する産業廃棄物の処理に関する違反も保管基準違反とみなされるため、廃棄物の種類にあわせた保管方法を確認することが重要です。
(4)その他の違反行為と罰則
その他の違反行為と罰則は、以下のとおりです。
違反内容 | 詳細 | 罰則 |
---|---|---|
報告義務違反(第30条) | 廃棄物の処理に関する情報の報告を怠った | 30万円以下の罰金 |
技術管理違反(第30条) | 廃棄物の適切な管理責任者を配置しなかった | 30万円以下の罰金 |
多量排出事業者の計画・報告義務違反(第33条) | 多量の廃棄物を排出する事業者が計画の提出や報告義務を怠った | 20万円以下の罰金 |
また、産業廃棄物の処理に関わる法令や基準は改定される場合があるため、常に最新の情報を把握し、対応を怠らないことが重要です。
6.産業廃棄物のリサイクルに関する事例
産業廃棄物は最終処分だけでなく、再生処理によって再利用させることも可能です。
ここでは、製造業・建設業・自動車産業・電子機器業界 など、さまざまな分野での産業廃棄物リサイクルの成功事例を紹介します。
(1)廃プラスチックの⾼品位リサイクルの実現
株式会社近江物産は、廃プラスチックのリサイクル技術を活用し、高品質な再生プラスチックの製造を行っています。同社では、工場や産業現場から排出される廃プラスチックを独自の技術で粉砕・洗浄し、異物を徹底的に除去することで、高純度な再生原料を生産しているのが特徴です。
これにより、リサイクル素材でありながら品質の安定した製品の供給が可能となり、自動車部品や建築資材、家電製品の製造に活用されています。
(2)ペットボトルリサイクルを軸にした商品開発
有限会社ウチダプラスチックは、使用済みペットボトルを再生し、新たな商品開発を進めることで、資源循環の促進に取り組んでいます。
同社では、回収されたペットボトルを細かく粉砕し、高度な精製工程を経てリサイクルペレットを製造開始しました。この再生ペレットは、文房具、包装資材、日用品など幅広い製品の原料として活用されており、プラスチック廃棄物の削減に貢献しています。
(3)⽊材代替製品で資源循環の仕組みを形成
川瀬産業株式会社は、建築現場や製材業界で発生する木材廃棄物をリサイクルし、木材代替製品の製造を行っています。従来、木材廃棄物の多くは焼却処理されていましたが、同社は廃木材を圧縮・加工し、人工木材として再生することで、森林資源の保全と産業廃棄物の削減に貢献しているということです。
同社の人工木材は、耐久性が高く、湿気や虫害に強い特性を持つため、屋外デッキやフェンス、建築資材などに幅広く活用されています。また、木材チップをバイオマス燃料として利用する取り組みも行われており、化石燃料の代替エネルギー源として注目されているのが特徴です。
これにより、木材廃棄物の再資源化が進むとともに、CO2排出量の削減にもつながっています。
7.まとめ
産業廃棄物の適正な処理は、環境保護と法令遵守の観点から極めて重要です。排出事業者には、適切な分別・保管、許可を受けた業者への委託、マニフェスト管理などの責任が課されており、違反すれば厳しい罰則が科されます。