グリーントランスフォーメーション(GX)は、従来の化石エネルギーから、太陽光発電や風力発電などに転換する取り組みです。GXへの取り組みは、脱炭素社会の実現やカーボンニュートラル、地球温暖化対策に貢献できます。
本記事では、グリーントランスフォーメーション(GX)の概要や重要性、関連法令など、主要国や日本国内の取り組み事例を交えて詳しく解説します。
1.グリーントランスフォーメーション(GX)とは

グリーントランスフォーメーション(GX)とは、温室効果ガス排出量の削減と経済成長の両立を目指した社会に転換する取り組みです。
GXの主たる目的は、地球温暖化対策の一環でもある脱炭素社会の実現です。具体的には、日常生活に欠かせない産業の燃料源や動力源を化石エネルギー(石油や石炭など)から、再生エネルギー(太陽光発電や風力発電など)に転換することです。
従来の生産・加工・焼却などに関連する産業では、多くの企業が化石燃料をエネルギー源として用います。化石燃料を燃焼すれば、大気中に温室効果ガスが排出され、地球温暖化が促進されます。
脱炭素社会を実現させるには、化石エネルギーの使用量を削減することが重要です。
日本政府は、2050年までにカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量実質ゼロ)実現を掲げており、化石エネルギーを使用する産業や輸送、廃棄物処理に至るまで温室効果ガスの排出削減に力を入れています。
(1)GXとカーボンニュートラルの違い
カーボンニュートラルは、GXに関する取り組みの一つです。
GXは、脱炭素社会の実現に向けた全体的な変革の概念であり、その中にカーボンニュートラルも含まれています。
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させる取り組みです。簡単に言えば、排出量と同量の温室効果ガスを吸収し、差し引きゼロにすることです。
一方、GXが目指すのは、クリーンエネルギーを軸とした新しい経済社会のシステム構築です。カーボンニュートラルも含め、化石エネルギーを必要としない社会を実現できれば、結果的に地球温暖化対策につながります。
(2)DXとGXの違い

DX(デジタルトランスフォーメーション)とGXは、いずれも社会全体の変革が目的ですが、焦点と手法には大きな違いがあります。
DXはデジタル技術を活用し、企業やビジネスモデル、さらには社会全体を変革することが目的です。
一方、GXは温室効果ガス排出量の削減やクリーンエネルギーへの移行を通じて、産業構造や社会システムを改革し、持続可能な社会を構築することを目指しています。
ただし、両者には強い関連性があります。特に、GXの実現にはデジタル技術の活用が不可欠です。
例えば、電気自動車(EV)の開発や普及は、GXの取り組みの一環でもあるCO₂排出量の削減に寄与します。CO₂排出量削減を実現させるには、デジタル技術を駆使した効率的な生産体制や管理システムが求められます。
GXが目指す「環境の持続可能性」とDXが目指す「デジタル技術による革新」は、ゴールは違えども、密接な関連があります。双方を一体化して推進することで、環境保全と経済成長の両立を可能にします。
2.グリーントランスフォーメーションが求められる理由

GXが求められる背景には、地球温暖化対策やESG経営の評価などが影響しています。以下では、双方について詳しく解説します。
(1)地球温暖化対策
GXが求められる大きな要因として、地球温暖化対策が挙げられます。第二次世界大戦終結後の1950年代以降から、世界中で急速に経済成長を遂げています。
その背景には、天然資源や化石燃料の使用が影響しています。経済発展を遂げた主要国は、環境負荷や環境破壊、天然資源の枯渇などを予見せず、惜しみなく使用したことで地球温暖化が進んでいます。
さらに、地球温暖化が進むにつれ、異常気象や海水面の上昇、森林火災、洪水など、日常生活が脅かされています。
現状のままでは、持続可能な社会を実現できず、後世に今までと同じ生活を残すことは望めません。
早急に地球温暖化対策に取り組む必要があり、地球温暖化を抑制できる一つの手段としてGXが求められています。
(2)ESG経営に対する評価の高まり
ESG経営とは、Environment(エンバイロメント:環境)、Social(ソーシャル:社会)、Governance(ガバナンス:統治)の頭文字を取った略称で、3つの要素を重要視した経営手法です。
ESG経営における3要素の主な内容は、以下の通りです。
- 環境:自然環境の保護、天然資源の浪費、生物多様性への配慮
- 社会:人権侵害の禁止、人種やジェンダーレスなどの差別禁止
- 統治:経営に関する透明性の確保、企業汚職や不祥事の隠ぺい等の防止
近年、地球温暖化や異常気象、人権問題など、日常生活が脅かされていますが、ESG経営に着手することであらゆる対策を推進できます。
ESG経営が注目をされるきっかけは、1992年に開催された「国連開発環境会議」により、国連が機関投資家に向けて「ESG投資」を促したことが始まりです。
機関投資家の間では「ESG投資」が共通認識として定着しており、ESG経営の重要性が高まっています。
そのため、ESG経営は企業の評価基準として定着しつつあります。特に、環境対策の一環としてGXに注目が集まっており、新たな市場や需要の創出が期待されています。
ESG経営に取り組む企業には、以下のメリットがあります。
- 社内外から評価を得られるため、長期的な成長が見込める
- ESGの取り組みを評価する金融機関もあり、資金調達が容易になる
- 新たなビジネスを創出しやすい
- ガバナンスを強化すれば経営リスクを抑制できる
- 経営リスクの低い企業は、投資家の評価も高くなる
このようにESG経営は、環境課題や人種問題を解決するだけでなく、企業の競争力を高める要因となり得えます。そのため、機関投資家や金融機関からの評価も高まっています。
ただし、ESG経営に取り組む際には、短期的な効果は期待できない点と、施策内容によっては多額の費用がかかることもあるので注意が必要です。
3.GXの実現に向けた課題と世界主要国の取り組み
GXの実現は、持続可能な社会システムを構築する際に不可欠ですが、その推進には多くの課題が存在します。また、世界の主要国は各々の戦略でGXに取り組んでいます。
以下では、GXを実現させるための主な課題と主要国の取り組みをご紹介します。
(1)GX実現に向けた主な課題
GXを実現させるには、以下の課題解決が求められています。
①資金調達と返済財源の確保
日本のGXでは、官民協調で今後10年の間に150兆円超のGX投資が必要とされていますが、民間事業者の予見可能性を高める必要があります。
そこで日本政府は、先行投資支援として「GX経済移行債」を発行し、20兆円の投資を計画している一方、機関投資家からの資金調達や返済財源の確保が課題となっています。
GX経済移行債とは、GX推進法に基づいており、日本政府が2050年までにカーボンニュートラル実現に向け、脱炭素社会への移行を支援するために発行する国債です。
GX経済移行債を発行したものの、現状ではGX経済移行債の多くを日銀が保有しており、投資家の安定的な確保ができていません。また、返済財源は、化石燃料賦課金や特定事業者負担金が検討されていますが、返済財源の確保が不透明です。
炭素税の導入やカーボンプライシングの収益、電気料金への上乗せなどが検討されています。ただし、最終的な負担が企業や国民に及ぶ可能性があり、今後の動向に注視しなければなりません。
(参考元:経済産業省「GX経済移行債を活用した投資促進策について」)
(参考元:経済産業省 資源エネルギー庁「GX(グリーントランスフォーメーション)の実現に向けた課題と対応」)
②カーボンプライシングの制度設計
GX推進において、炭素価格の設定や排出量取引制度の公平性が重要です。日本では導入時期の遅れや炭素価格の低さが指摘されており、適切な制度設計が求められています。
③技術革新と人材育成
脱炭素化を進める上で、再生可能エネルギーの導入やエネルギー効率化などの技術革新が必要です。また、これらの技術を支える人材の育成も重要な課題です。
(2)世界主要国のGXへの取り組み
GXに取り組む世界主要国の主な事例を3つご紹介します。
①アメリカ
アメリカでは、温室効果ガスの排出量を2030年までに2005年比で50〜52%削減し、2050年のカーボンニュートラルを目標に掲げています。
主な取り組みは、以下の通りです。
- 脱炭素社会の実現に向け、2022年8月に気候変動対策を盛り込んだインフレ削減法を成立
- 歳出予算案の85%を占める3,690億ドル(約54.6兆円:1ドル148円換算)を、エネルギーセキュリティと気候変動対策に対する投資に充当
- 2032年までに建設を開始した施設を対象にクリーン水素の生産量に応じて税額控除
- 2022年10月に米国エネルギー省がEV用蓄電池の国内生産拡大を目的としたプロジェクトに対して合計28億ドル(約4,144億円:1ドル148円換算)の助成金を付与
- 税額控除等により、クリーン水素製造や太陽光・風力等の導入、原子力発電を促進
- 家庭部門等への電化支援とEVカー等への支援でEVの普及を促進
- 老朽化した原子力発電所への支援
②欧州連合(EU)
EUでの目標は、2021年7月に公布した「欧州気候法」に基づき、温室効果ガス排出量を2030年には1990年比で55%以上削減することと、2050年のカーボンニュートラル実現です。
主な取り組みは、以下の通りです。
- 2020年1月、「欧州グリーン・ディール投資計画7」を発表
- 脱炭素社会の実現に向け、官民あわせて10年間で1兆ユーロ相当(約163兆円:1ユーロ162.96円換算)の投資の動員を目指す
- 現在の発電容量が約200GWの太陽光は、2025年までに発電容量を320GW以上に増加させ、さらに2030年までには約600GWへの増加を目指す
- 水素は2030年までの域内生産目標を年間約1,000万トンまでの引き上げに伴い、同量の水素を域外からも輸入する
- 2030年までにEU水素市場を開設予定
- カーボンニュートラル達成に必要なクリーンテック(風力、ヒートポンプ、太陽光、水素等に関する技術やサービス全般)に関する2030年までの目標を設定
- 製造拠点の整備に必要な許可手続の簡略化と迅速化を図り、産業全体の電化を促進
- 再エネ導入目標の引き上げに伴い、再エネの導入を促進
- 原子力を持続可能な活動として認識している
③イギリス
イギリスでは「ネットゼロ戦略」の実現と、2050年のカーボンニュートラルを目標に掲げています。
主な取り組みは、以下の通りです。
- 2021年には、260億ポンド(約5兆円:1ポンド192円換算)の設備投資を発表
- 太陽光は、2035年までに最大70GW、2030年までに洋上風力を最大50GWまで増加させる
- 原子力は、2030年までに最大8基の原子炉新設予定、2050年までに最大24GWの出力を整備し、電力需要の最大25%を賄うことを目指す
- 水素は、2030年までに低炭素水素の生産能力を10GWまで増加させる
- 新規の北海石油・ガスプロジェクトの認可プロセスを開始予定
- EVの公共充電設備の設置台数に関し、2030年までに現在の約3万台から30万台に増やす計画
- ガソリン車やディーゼル車の給油よりもEV車の充電の方が簡単で安価になることを目指す
- 電力、陸上輸送、鉄鋼、水素、農業等の分野における新たなグリーンテクノロジー開発に注力
- 途上国のエネルギー集約型産業のグリーン化に向け、6,500万ポンド(約125億円:1ポンド192円換算)超えの投資を発表
(参照元:経済産業省 資源エネルギー庁)
各国は、それぞれの経済状況やエネルギー事情に応じてGX戦略を策定し、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを進めています。
日本もこれらの動向を踏まえ、技術革新や制度の構築を通じてGXを推進することが求められています。
4.日本政府が推進するGX推進戦略とは

日本政府は、2050年のカーボンニュートラルを目指し、「GX推進戦略」を策定しました。
GX推進戦略の柱となる主な内容は、以下の5つです。
- 徹底した省エネの推進
- 再エネの主力電源化
- 原子力の活用
- 水素・アンモニアと既存燃料との価格差を解消する支援
- カーボンリサイクル燃料の推進
各内容について、下表にまとめました。
5つの柱 | GXの取り組み内容 |
徹底した省エネの推進 | エネルギー消費の効率化はGX推進戦略の中核である高効率設備の導入や省エネ技術の促進により、エネルギー浪費を削減企業や家庭における省エネ意識の向上を図り、持続可能な社会の実現を目指す |
再エネの主力電源化 | 今後10年間程度で、過去10年の8倍以上の規模で系統整備を行う再生可能エネルギーを主力電源とする導入コストの削減と技術革新を推進風力や太陽光発電を中心に、地域特性を活かしたプロジェクトを展開エネルギー自給率の向上と脱炭素社会を目指す |
原子力の活用 | 廃炉を決定した原発の敷地内での次世代革新炉への建て替えを具体化安全性を最優先としつつ、原子力をGXの一翼として活用(40年+20年の運転期間制限を設けた上で、一定の停止期間に限り、追加的な延長を認める)既存設備の再稼働や技術開発を目指す安定供給と温室効果ガス排出削減を両立させる方針を掲げている |
水素・アンモニアと既存燃料との価格差を解消する支援 | 補助金制度やインフラ整備を通じて価格差を縮小し、クリーンエネルギーの市場導入を加速ただし、水素やアンモニアの普及拡大には、コストの課題解決が必要 |
カーボンリサイクル燃料の推進 | 二酸化炭素を活用したカーボンリサイクル燃料の開発新技術の研究・普及を支援炭素資源を無駄なく利用し、循環型エネルギー社会の構築を目指す |
(参考元:経済産業省 我が国のグリーントランスフォーメーション政策)
GX推進戦略は、脱炭素社会への移行を経済成長の機会と捉え、産業競争力の強化と環境保全の両立を図るものです。 官民が一体となり、上記の施策に取り組むことで、地球温暖化対策や化石エネルギーの使用削減、環境負荷の軽減などに貢献できます。
5.グリーントランスフォーメーションに関する法律

日本政府は、GXに関する法律を定めており、主となる法律を2つご紹介します。
(1)GX推進法
GX推進法(正式名称:脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律)は、日本の経済全体を脱炭素型へ円滑に移行させるために制定された法律です。
2023年5月に施行して以降、政府は今後10年間で150兆円超の官民投資を実施するとしており、資金調達のために「GX経済移行債」を発行することを決定しました。
この法律により、企業はGX関連の投資に対する長期的な支援が受けられ、脱炭素の新たな技術開発やエネルギー転換に関して積極的に取り組めます。
特に、再生可能エネルギーや水素、アンモニアなどの次世代エネルギーの普及が加速すると期待されています。
(参考元:e-eov法令検索 脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律)
(2)GX脱炭素電源法
GX脱炭素電源法は、「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」として位置づけられており、脱炭素電源の導入と安定供給を確保するための法律です。
電気事業法には、以下の法律が含まれています。
- 電気事業法
- 再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法(再エネ特措法)
- 原子力基本法
- 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(炉規法)
- 原子力発電における使用済燃料の再処理等の実施に関する法律(再処理法)
近年、原油価格の高騰やロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー供給の不安定化により、日本は輸入に頼らないエネルギー源の確保が急務となっています。
この法律では、再生可能エネルギーの導入拡大に加え、「準国産エネルギー」と位置づけられる原子力の活用にも焦点を当てています。
具体的には、次世代型の原子炉開発や既存原発の運転期間延長などが検討されています。これにより、エネルギーの安定供給を確保しつつ、脱炭素社会への移行を加速する狙いがあります。
また、法律の施行により、GX関連産業への投資が拡大し、再生可能エネルギーや水素、原子力といった脱炭素技術の市場が成長することが予測されます。また、企業にとっては、GXに関する支援策を活用することで競争力の強化が可能となるでしょう。
今後、GX推進の動きはますます加速すると考えられます。脱炭素経営を目指す企業にとって、GXに関連する法律の動向を把握し、適切な戦略を立てることが重要です。
6.GXに取り組む日本企業の主な事例
(1)SaaSを活用したCO₂排出量の見える化
SaaS(サースまたはサーズ:Software as a Service)を活用すれば、CO₂排出量の見える化が可能であり、企業が持続可能な経営を推進する上で重要な手段の一つです。
特に、消費エネルギー量の多い製造業などの業種では、電力使用量を正確に把握し、効率的な省エネ対策を講じることが求められています。
例えば、株式会社タンソーマンGXが提供するクラウドを活用した「タンソチェック」は、インターネットが利用できるデバイスがあれば、アカウント登録だけですぐにでも利用できます。
自社のCO₂排出量の測定端末とアプリと連携させることで、測定データはクラウド上で管理され、データの自動入力、集計、グラフ化、レポートの即時作成が可能です。CO₂排出量を見える化することで、企業は具体的な省エネ施策の検討や効果検証を効率的に行えます。
さらに、SaaS型のCO₂排出量管理システムを導入すれば、企業はサプライチェーン排出量の把握にも寄与します。すでにサプライチェーン排出量の報告は、法律で義務化が決定しており、Scope1、Scope2、Scope3といった温室効果ガス排出量の全体像を把握し、脱炭素経営の推進に役立ちます。
このように、SaaSを活用したCO₂排出量の見える化は、企業の環境負荷低減と持続可能な社会を実現させる上で重要なツールとして活用が推進されています。
(2)CO₂を再資源化できる新たな技術開発
CO₂の再資源化は、地球温暖化対策として注目される技術分野であり、排出された二酸化炭素を有用な資源として再利用することが目的です。
現在、排出されたCO₂を分離回収して貯留する技術開発が進められています。その中でも、株式会社Eプラスでは、CO₂の埋没処理方法ではなく、CO₂を燃料化して再利用できる技術開発に取り組んでいます。
排出されたCO₂は、回収してアミン液で吸収し、特許技術を用いて電気分解することで、炭素水素が生成されます。炭素水素はCO₂の燃料化とガスの分離回収が同時に行えます。
CO₂を吸収した吸収液は、産業廃棄物として処理されることが一般的ですが、同社は分離回収することでCO₂を燃料化しています。
現時点では、ボイラー燃焼の実証実験やディーゼル発電機への適用を検討している段階です。
今後、CO₂再資源化技術のさらなる研究開発と実用化が進むことで、持続可能な社会の実現に大きく貢献することが期待されています。
(参考元:経済産業省 近畿経済産業局)
(3)大気中のCO₂回収を可能にした吸着剤
地球温暖化対策として、大気中の二酸化炭素(CO₂)を直接回収する技術が注目されています。この技術の中核を担うのが、「直接空気回収技術(DAC:Direct Air Capture)」です。DACは、空気中の低濃度のCO₂を効率的に吸着・分離することで、大気からCO₂を除去します。
DAC技術には、主に2つの方法があります。一つは、空気を吸収液に通し、CO₂を化学的に吸収・分離し、加熱によってCO₂を回収する方法です。(前章で紹介した技術)
もう一つは、空気を固体吸着剤に通し、CO₂を物理的に吸着・分離し、加熱や減圧、加湿操作などでCO₂を回収する方法です。近年、これらの技術をさらに進化させるための新たな吸着剤の開発が進められています。
株式会社ユニックスでは、CO₂回収ハニカムの研究開発・商品開発を行っており、粉末吸着剤の性能を落とさず、ハニカム構造のフィルター成形に着手しています。
同社のCO₂吸着剤は、大手半導体メーカーを中心に広く活用されています。さらに、既存の吸着剤よりも製品寿命が4〜8倍ほど長く、コスト削減が可能です。
さらに製品が普及し、より多くの企業が利用することで、カーボンニュートラル社会の実現に大きく前進します。
このような吸着剤の開発と実用化は、今後の地球環境保全において不可欠な要素となるでしょう。
(参考元:経済産業省 近畿経済産業局)
7.まとめ
今回は、グリーントランスフォーメーション(GX)について解説しました。
GXとは、温室効果ガスの排出量を抑制し、従来の化石エネルギーからグリーンエネルギー(太陽光・風力・水力・地熱など)に転換する取り組みのことです。
持続可能な社会を実現させるには、地球温暖化対策やカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現など、総合的に取り組む必要性が求められています。