産業廃棄物をリサイクルする方法は?必要性とメリット、具体例を解説

産業廃棄物は、適切な処理が求められるだけでなく、リサイクルを通じて貴重な資源として再利用することが可能です。しかし、多くの企業が廃棄物を埋立処分しているのが現状であり、産業廃棄物のリサイクル率は高いとはいえません。

この記事では、産業廃棄物をリサイクルする必要性産業廃棄物のリサイクルにおけるメリットなどを解説します。

INDEX

1.産業廃棄物をリサイクルする必要性

産業廃棄物のリサイクルは、資源循環型社会の構築において不可欠な取り組みです。
環境省の統計によると、我が国の産業廃棄物排出量は年間約3.6億トン(令和5年度)で推移しており、適切なリサイクルによる資源の有効活用が急務となっています。

(1)限られた資源の有効活用

引用:https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2010pdf/20101201043.pdf

日本の資源自給率は極めて低く、レアメタル等の重要鉱物の大部分を海外に依存しています。
特に、デジタル化社会に不可欠なリチウム、コバルト、ニッケルなどは、電気自動車再生可能エネルギー関連機器の普及により需要が急増しています。

2023年の経済産業省資料では、これらの重要鉱物の価格は高騰しており、安定調達が困難な状況です。使用済み製品からのリサイクル(都市鉱山)により、レアメタル需要の10~20%を賄うことが可能とされています。

法的根拠として、「循環型社会形成推進基本法」「小型家電リサイクル法」「自動車リサイクル法」等が整備され、産業廃棄物の3R(Reduce、Reuse、Recycle)が法的に義務付けられています。資源循環により、原材料調達コストの削減と供給リスクの軽減を同時に実現できるため、製造業の競争力強化に直結します。


(2)埋立地の負担軽減

引用:https://www.env.go.jp/recycle/circul/venous_industry/ja/history.pdf

環境省の統計によると、産業廃棄物最終処分場の残余年数は19.7年まで短縮しています。首都圏や近畿圏では特に深刻で、一部地域では残余年数が数年程度まで減少している状況です。

最終処分場の新設は「NIMBY(Not In My Back Yard)問題」により極めて困難な状況にあります。地域住民の反対運動は全国的に継続しており、建設計画の大幅な遅延中止が相次いでいます。過去の東京都日の出町での大規模な反対運動に代表されるように、社会的合意形成に長期間を要するケースが多発しています。

リサイクル促進により最終処分量を削減することで、既存処分場の延命効果が期待できます。特に再生可能な金属類や建設系廃棄物の適切な分別・リサイクルにより、最終処分量の大幅な削減が可能です。

(3)自然環境の保護とカーボンニュートラル推進

引用:https://www.city.shizuoka.lg.jp/documents/1515/000687378.pdf

産業廃棄物の適切なリサイクルは、CO2排出量削減に直結する重要な環境対策です。
特に廃プラスチック類と古紙を原料とするRPF(固形燃料)は、石炭と比べてCO2排出量が大幅に削減され、カーボンニュートラル実現に大きく貢献します。

2024年の廃棄物処理法改正により、電子マニフェストの導入が加速し、廃棄物処理の透明性が飛躍的に向上しています。これにより、処理業者の選定から最終処分までのトレーサビリティが確保され、不法投棄不適正処理のリスクが大幅に軽減されています。

また、建設リサイクル法に基づく再生骨材の利用や、自動車リサイクル法による金属資源の回収は、新規採掘に伴う森林破壊や土壌汚染の防止にも寄与しています。循環型社会の実現により、天然資源の保護と生物多様性の維持を両立できる持続可能な社会システムの構築が進んでいます。

2.産業廃棄物のリサイクルにおけるメリット

産業廃棄物のリサイクルは、環境配慮にとどまらず、企業の収益性向上競争力強化に直結する戦略的取り組みです。特に資源価格が高騰する現在、経済的メリットが顕著に現れています

(1)廃棄物処理のコスト削減と収益創出

たとえば、金属スクラップやプラスチック廃材は、適切に分別・処理することで買取対象となる場合があり、処分費用を削減できるだけでなく、売却益を得ることもできます。

なかでもアルミや銅などの非鉄金属、レアメタルなどの高品質な資源は需要が高く、高額で取引されるケースも少なくありません。また、自社内で廃棄物をリサイクルする仕組みを整えれば、外部業者への処理依頼が不要となり、さらなるコスト削減が見込めます。

また、自社内でのリサイクルシステム構築により、処理委託費用の削減と同時に、RPF(固形燃料)や再生原料としての自家利用が実現できます。これにより年間数百万円から数千万円規模のコスト削減効果を得る企業が増加しており、循環型経営モデルへの転換が加速しています。

(2)企業イメージの向上

産業廃棄物のリサイクルに取り組むことで、地球環境に優しい企業としてのブランド価値を高める大きな要因となります。

企業の環境への取り組みが消費者や取引先から注視されるようになり、SDGs(持続可能な開発目標)ESG投資の注目が高まる中、環境配慮型の企業活動は重要な競争力となっています。

たとえば、産業廃棄物のリサイクル実績を公表し、環境報告書CSR(企業の社会的責任)活動に盛り込むことで、消費者やステークホルダーに対して明確なメッセージを伝えることができます。

これにより、企業イメージが向上し、製品やサービスの付加価値が高まるとともに、環境意識の高い消費者層の支持を得ることが期待できるでしょう。

さらに、環境配慮型企業は消費者の支持獲得にも有効で、Z世代を中心とした環境意識の高い層からの製品・サービス選択において競合優位性を確保できます。これらの取り組みにより、ブランド価値の向上長期的な企業価値の創造が実現されています。

3.リサイクル可能な産業廃棄物の種類

産業廃棄物のリサイクルは、資源循環型社会の実現において中核的な役割を果たしています。
廃棄物処理法で規定された20種類の産業廃棄物のうち、特に高いリサイクルポテンシャルを有する品目について解説します。

(1)廃油

廃油は工場で使用されたエンジンオイル、潤滑油、切削油、洗浄油等を含み、近年バイオ燃料としての活用が急速に拡大しています。
廃油のリサイクル率は4割と低い状況ですが、リサイクル方法には以下があります。

燃料として再利用廃油を処理し、重油や潤滑油、補助燃料として使用
工業製品に活用廃食用油を化学処理して肥料、飼料、工業用石鹸に再利用

廃油の適切なリサイクルは、エネルギー資源の有効活用につながりますが、活用方法には課題もあり、現在もさまざまな分野で研究が進んでいます

(2)金属くず

金属くずは、金属くずは産業廃棄物の中でも最もリサイクル率が高い品目の一つで、現在日本で排出されている金属くずのほとんどが、金属部分を取り出した回収や精錬といった方法でリサイクルされています。これには鉄鋼の切削くず、研磨くず、バリ、ダライ粉(旋盤キリ粉)、非鉄金属くずなど多岐にわたる種類が含まれます。

リサイクルプロセスでは、金属精錬処理により不純物を除去して純度の高い金属を回収し、切断・粉砕処理で加工しやすい形状に整えます。回収された金属は建設資材、自動車部品、家電製品、アルミ缶などの原材料として再利用され、新たに鉱山から採掘する天然資源の投入量を抑制することが可能です。

(3)鉄スクラップ

鉄スクラップは金属くずの中核を成す廃棄物で、工場での製品製造時に生じる自家発生スクラップと、使用済み製品や建物・自動車の解体時に発生する市中スクラップに分類されます。

リサイクル工程で不純物を除去し、精錬処理を繰り返して純度の高い鉄を回収します。 リサイクルされた鉄は、自動車や家電製品、建設資材など、幅広い分野で活用されており、建設用の鉄筋、車体の部品、家庭用電化製品の外装などに使用している状況です。

(4)廃プラスチック

廃プラスチックは合成樹脂くず、合成繊維くず、合成ゴムくずなどプラスチック製品の製造過程で発生する廃材や使用済み製品を指します。2023年度の廃プラスチック総排出量は769万トンで、有効利用率は89%に達している状況です。廃プラスチックはその特性や状態に応じて、以下の方法でリサイクルされます。

マテリアルリサイクル選別・洗浄・粉砕を経て、粒状の再生プラスチックとして加工
ケミカルリサイクル廃プラスチックを化学分解し、化学原料や燃料として再利用
サーマルリサイクル廃プラスチックを燃焼させ、発生する熱エネルギーを回収して利用する

2022年度から2023年度にかけて有効利用率は87%から89%へ上昇しており、プラスチック資源循環促進法の施行効果も相まって、循環型社会の実現に向けた取り組みが着実に進展しています。

ただし、サーマルリサイクルを除外した真のリサイクル率は約25%に留まっており、マテリアル・ケミカルリサイクルの更なる促進が課題となっています。

出典:https://www.pwmi.or.jp/column/column-2358/

(5)汚泥

汚泥とは、事業活動の過程で発生する泥状の廃棄物全般を指します。
発生する環境や性質により、食品工場や製薬工場の排水処理過程で発生する有機汚泥土木工事現場や金属加工工場で発生する無機汚泥に分類されます。

汚泥の処理状況は、令和3年度実績で再生利用量7%減量化量92%最終処分量1%となっており、大部分が脱水・焼却等の中間処理により減量化されています。

汚泥は産業廃棄物の中でも発生量が非常に多く、多様な形でリサイクルが進められています。主なリサイクル方法は以下の通りです。

  • セメント原料への活用(無機汚泥の焼却灰利用)
  • 肥料としての利用(有機汚泥の堆肥化)
  • 重油の回収(含油汚泥からの油水分離処理)
  • バイオマスエネルギーの生成(嫌気性消化によるメタンガス回収)

近年は下水汚泥の有するエネルギーポテンシャル(約120億kWh相当)を活用した創エネルギー・省エネルギー対策が注目されており、カーボンニュートラル実現に向けた重要な資源として位置づけられています。

出典:https://www.env.go.jp/content/000211701.pdf

(6)木くず

木くずはリサイクルしやすく、適切に処理することでさまざまな用途に再利用されます。

マテリアルリサイクル木くずを破砕・粉砕し、再利用可能な原材料として加工、特に製紙業界では重要な原料として位置づけられ、繊維質を有効活用
サーマルリサイクル木くずを燃焼させて熱エネルギーを回収、バイオマス発電施設での木質燃料としての需要高

その他、堆肥化による土壌改良材、畜産業での敷料、園芸用マルチング材としても利用され、農業分野での循環利用も進んでいます。処理方法の選択は木材の種類、汚染状況、地域のリサイクル施設の有無により決定されます。

(7)がれき

がれき類は、工作物の新築、改築又は除去に伴って生じたコンクリートの破片その他これに類する不要物と定義され、建設現場や解体工事の際に発生する廃棄物です。主にコンクリート破片、アスファルト塊、レンガくず、コンクリートブロックくず等が含まれます。

産業廃棄物全体の15.6%、排出量は約5,977万トンに上り排出量ランキング第三位を占めています。しかし、令和3年度の再生利用率は96%産業廃棄物の中でトップクラスのリサイクル率を誇ります。リサイクルされたがれきは、以下のような形で再利用されます。

再生砕石道路の路盤材や埋め戻し材に利用
再生骨材コンクリート製品やアスファルト舗装材の原料として利用
埋め戻し材建設現場の地盤整備や埋め戻し作業に使用

組成が比較的単純なため、再生利用しやすく 、適切な処理により最終処分場の容量節約と環境負荷軽減に大きく貢献しています。

出典:https://www.env.go.jp/press/110498_00001.html

(8)石膏ボード

石膏ボードは住宅建物の壁材・天井材として広く使用される建築資材で、建設現場や解体工事で大量に発生する産業廃棄物です。石膏ボードは、その特性を活かして以下の方法でリサイクルされています。

再生処理石膏成分と紙成分に分離し、新たな石膏ボードの原料として再利用
セメント原料への利用リサイクルされた石膏をセメントの硬化速度の調整に活用
再生紙の原料石膏ボードの表面に使用されている紙部分はを回収し、再生紙の原料として再利用

しかし、解体系の廃石膏ボードは品質が一定でないことから有効利用が進まず、50%以上が最終処分されているのが現状です。石膏ボードを埋立処分すると硫酸塩還元菌により硫化水素という有毒ガスが発生するため、平成18年より管理型最終処分場での処分が義務づけられ、適切なリサイクルが環境保全上重要となっています。

出典:https://www.env.go.jp/content/900536664.pdf

(9)動植物性残さ

動植物性残さは、食料品製造業、医薬品製造業、香料製造業の特定業種で原料として使用した、動物性や植物性の固形状の不要物と定義される産業廃棄物です。主に肉類や魚の骨、動物の皮や脂肪、植物の茎や葉、果実の皮や種などが含まれます。

排出量は23万9千トンで、産業廃棄物全体に占める割合は0.6%と排出量は少ないものの、高いリサイクル率を誇っている産業廃棄物となります。動植物性残さのリサイクルは、主に以下の方法で行われます。

肥料への加工有機肥料や堆肥として農業分野での再利用
飼料としての再利用魚の骨や動物の副産物を加工して飼料に利用
バイオガスの生成微生物で分解し、メタンガスなどを生成するバイオマスエネルギーとして利用

肥料や飼料としての活用により、新たな原材料の採取を減らし、資源の循環を促進します。また、バイオガスエネルギーの生成は、再生可能エネルギーの普及に寄与し、化石燃料の消費削減にもつながります。

出典:https://www.env.go.jp/content/000123320.pdf

(10)医療廃棄物

医療廃棄物は医療機関などで生じる産業廃棄物で、医療行為によって使われた注射針やメスなどの医療機器血液レントゲン現像廃液などが該当します。

感染性廃棄物は人が感染し、若しくは感染するおそれのある病原体が含まれ、若しくは付着している廃棄物又はこれらのおそれのある廃棄物と定義され、特別管理産業廃棄物として、廃棄から最終処分までを慎重に取り扱われます

感染性廃棄物、または非感染性廃棄物の区別は、形状・排出場所・感染症の種類の3つの観点から判断されます。感染性廃棄物は種類や性質によって、「赤」「橙」「黄」の3つのマーク(バイオハザードマーク)を添付して処理されます。医療廃棄物のうち、リサイクル可能なものは適切な処理を経て資源として再利用されています。

プラスチック容器の再利用非感染性のプラスチック容器を洗浄・消毒し、プラスチック原料や新たな製品の材料として利用
金属類の再利用不純物を除去したうえで回収され、金属資源として再利用
焼却処理でのエネルギー回収焼却時に発生する熱エネルギーを回収して利用

医療廃棄物の適切なリサイクルは、感染症リスクの軽減資源の有効活用を両立させる取り組みです。また、適切に処理されない場合、大気汚染や土壌汚染の原因となる可能性があるため、厳格な管理が求められます。

(11)燃え殻やばいじん

燃え殻・ばいじんは、廃棄物を焼却処理した際に発生する焼却灰で、燃え殻は炉底に残る固形物、ばいじんは排ガス中に含まれる粒子状物質です。令和4年度に排出された燃え殻は約2,227千トンで、産業廃棄物全体の0.6%を占めています。

重金属ダイオキシン類を一定以上含む場合は、特別管理産業廃棄物の扱いとなり、厳格な管理が求められます。
燃え殻や飛灰は、それぞれの特性に応じて以下の方法でリサイクルされます。

セメント原料としての活用セメントの硬化性や耐久性を高めるための重要な成分として活用
路盤材やコンクリート原料としての利用道路の路盤材やコンクリート製品の原料として利用
金属の回収燃え殻や飛灰からは、アルミニウムや鉄分などの金属を回収

燃え殻とばいじんの多くは、容器に収納した状態で管理型最終処分場に埋め立てられており、適切な前処理により有害物質を除去することで環境汚染防止リサイクル推進を両立させています。

4.産業廃棄物をリサイクルする流れ

ここでは、産業廃棄物をリサイクルする一般的な流れと法的要件と実務手続きを踏まえて解説します。

(1)リサイクル業者と契約

産業廃棄物のリサイクルには、適切なリサイクル業者との委託契約が必要です。「産業廃棄物処理業の許可を持った業者に委託しなければならない」という基準があり、許可業者の許可証の写し先進事例の確認法的義務となります。

マニフェスト制度は、産業廃棄物を委託処理する排出事業者の責任を確保し、不法投棄を未然に防止することを目的とした制度で、処理状況を管理します。適切な契約を締結せずに処理を委託した場合、懲役3年以下若しくは300万円以下の罰金又はこの併科という厳しい罰則が定められているため、許可業者の確認は重要です。

出典:https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/resource/industrial_waste/on_waste/itaku

(2)収集運搬の準備

契約が完了したら、廃棄物の収集運搬を準備します。

運搬車両の手配や廃棄物の運搬スケジュールを調整します。GPS付き車両を利用することで、運搬状況や到着時刻をリアルタイムで把握することが可能です。

(3)産業廃棄物の収集と運搬

廃棄物を保管場所から収集し、処理施設へ運搬します。

この作業は収集運搬業者が担当しますが、排出事業者(廃棄物を出した企業)は、廃棄物の保管状況や運搬状況を適切に管理する義務があり、これにはマニフェストの適切な運用が含まれます。

(4)中間処理

処理施設に運ばれた産業廃棄物は、中間処理施設で適切な処理が行われます。
具体的な処理方法には、焼却、脱水、破砕、溶融、選別などがあり、これにより廃棄物の量を減らし、有害物質を除去します。

中間処理は、リサイクル可能な資源を分別しやすくするための重要な工程です。

(5)リサイクル

中間処理でリサイクル可能と判断された廃棄物は、加工を施して原材料や再生エネルギーとして活用されます。

一方、リサイクルが困難な廃棄物は、最終処分場へ輸送され、埋め立て処分が行われます。なお、日本では海洋投棄は原則禁止されており、特定の例外を除き実施されていません

5.産業廃棄物をリサイクルする時の注意点

産業廃棄物をリサイクルする際には、適切な処理と管理を行うため、いくつかの重要なポイントに注意する必要があります。

(1)産業廃棄物処理の許可を得ている業者を選ぶ

産業廃棄物処理を依頼する際は、産業廃棄物処理業の許可を得ている適切な業者を選ぶ必要があります。この許可を持つ業者は、廃棄物を処理できる施設を所有しており、廃棄物の収集運搬や処理に関する技術や知識を備えています。

特に重要なのは、排出事業者には、自らが排出した廃棄物が適正に処理されるまでの一貫した「排出事業者責任」が課せられている点です。

法律上、無許可の業者に廃棄物処理を委託することは厳しく禁止されており、もし無許可の業者に依頼した場合、廃棄物処理法第25条に基づき、委託した側の排出事業者も「5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方」という極めて重い罰則の対象となります。

加えて、不適正処理や不法投棄が発生した場合、法的罰則に留まらず、企業の社会的信用やブランドイメージが著しく毀損され、サプライチェーン全体への信頼失墜を招く可能性があります。

(2)産業廃棄物処理の実績がある業者を選ぶ

業者を選定する際は、産業廃棄物処理の実績があるかどうかも重要な判断基準です。
実績のない業者は、業務遂行能力を正確に判断するのが難しく、適切に処理されない可能性があり、処理過程で問題が発生すると、委託業者だけでなく排出事業者も法的責任を問われます。

信頼性の高い業者を選ぶには、業者が産業廃棄物処理業の許可を持ち、適切な実績があるか確認することが重要です。自治体や公的な情報源を活用し、許可の有効性過去の処理実績を調査しましょう。

(3)委託契約書を交わす

産業廃棄物の処理を委託する際は、収集運搬業者や処分業者と委託契約書を交わす必要があります。契約書には以下の内容を正確に記載します。

  • 産業廃棄物の種類、量
  • 委託契約の期間
  • 委託料金
  • 業者が遂行する業務の範囲

業者の許可証のコピーを添付し、許可証の有効期限も確認してください。
許可証が契約期間中に失効し、更新されなかった場合、無許可業者に委託したと見なされ、法的問題が発生する恐れがあります。

また、委託業務が完了した後も、契約書は5年間保管する義務があります。

(4)マニフェストを作成する

マニフェストは、廃棄物処理の透明性を確保する重要な書類です。適切な運用と管理は、法的リスク回避信頼性確保のために必要です。

マニフェスト(産業廃棄物管理票)は、産業廃棄物の種類や量、運搬先、処理方法などを記載した伝票で、適切な処理が行われたかどうかを確認するために使用されます。排出事業者には、委託先業者にマニフェストを交付し、廃棄物処理の流れを記録・管理する義務があります。

また、マニフェストの交付状況は自治体へ報告する必要があり、報告を怠ると法的な罰則を受ける可能性があります。さらに、マニフェストも契約書と同様、5年間の保存義務が課されています。これにより、廃棄物処理の透明性と追跡性が確保されます。

6.まとめ

産業廃棄物のリサイクルは、資源の有効活用や埋立地の延命、環境保護に不可欠です。

金属、廃プラスチック、がれきなど多くの廃棄物が再資源化でき、コスト削減や企業イメージ向上にもつながります。適切な業者選定とマニフェスト管理が重要で、法令遵守が求められます。リサイクルを通じて、循環型社会の実現が進められています。

監修

産業廃棄物・リサイクル事業を主軸とする法人を経営しながら、フリーランスのライター・ディレクターとして情報発信にも携わっている。産業廃棄物分野での現場経験とデータ分析力を活かした情報発信に強みがある。

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