循環型社会の取り組みとは?企業・政府・世界の具体例、5Rなど

天然資源の枯渇やごみ問題、環境破壊など、地球環境への負荷が限界に達しつつあることから、廃棄物を減らし資源を循環させる循環型社会の実現が求められています。循環型社会は、資源を有効活用し環境負荷を軽減する持続可能な経済モデルです。

循環型社会の特徴
  • 資源の効率的利用と廃棄物削減
  • 環境への負荷軽減
  • 3R(リデュース・リユース・リサイクル)の推進

この記事では、循環型社会の定義実現に向けた5Rの取り組み日本と世界の事例を詳しく解説します。

五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、現在の資源循環が抱える課題に多面的にアプローチし、多用な手法を組み合わせて企業の環境経営を包括的に支援します。

INDEX

1.循環型社会とは

これらの問題は、人間が自分たちの経済活動や利益を優先し、環境(資源)を顧みずに活動してきた結果であり、これらの問題をないがしろにすれば、私たち人間に必ず悪影響が及びます。実際に、「プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)」では、すでにいくつかの点で限界に達しています。(出典:https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h30/pdf/1_1.pdf

これらの問題は、私たちの今までの人間活動を見直さない限り、人類の生活経済活動に多大な悪影響を及ぼすだけでなく、次世代への負担として大きくのしかかるでしょう。現在では、資源を効率的かつ循環的な有効活用を目標とし、循環型社会の実現に向けた取り組みが世界中で行われています。

(1)環境省が定める循環型社会の定義

環境省では、循環型社会を次のように定義しています。

循環型社会とは、廃棄物等の発生抑制、循環資源の循環的な利用及び適正な処分が確保されることによって、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される社会。

引用:環境省 循環型社会形成推進基本法の概要

循環型社会形成推進基本法において、循環資源として位置付けられる具体的な物品の一覧は、直接的には明記されていません。しかし、同法の第2条第2項では、「廃棄物等のうち、有価物として取引されるものその他の再生利用が可能なもの」を「循環資源」と定義しています。

循環資源として取り扱われる一般的な素材
  • プラスチック類特定家庭用機器(エアコン・テレビ・冷蔵庫・冷凍庫・洗濯機・衣類乾燥機)
  • 建設廃棄物(コンクリート・アスファルト・鉄・木材)
  • 食品廃棄物自動車部品(鉄・電子部品・フロン・エアバッグなど)
  • タイヤパソコンおよび周辺機器、小型電子機器、電池
  • 下水汚泥

これらの物品は、個別のリサイクル関連法令(例えば、家電リサイクル法や食品リサイクル法など)において、再生利用適正処理の対象として具体的に規定されています。

(2)循環型社会が注目される背景|天然資源の枯渇・気候変動・環境破壊

循環型社会の課題は、主に以下の3つです。

天然資源の枯渇このまま大量生産・大量消費を続ければ、鉱物や原油といった資源が枯渇する恐れがある
気候変動プラスチック製品の製造や廃棄処理、原油や鉱物の採掘によるCO₂排出は、気候変動の主な要因である
環境破壊廃棄物を最小限に抑える循環型社会の実現は、環境破壊を抑制できる
画像引用:https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2023/html/2-2-2.html

石油の可採年数は約53.5年(出典:https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2024/pdf/2_2.pdfであり、現在の消費ペースで利用し続けた場合、50年余りで枯渇する可能性があります。

その他にも中東地域には世界全体の石油確認埋蔵量の約半分が集中しており、このような資源の偏在は地政学的なリスクを伴います。石油に関して、ベネズエラ世界最大の埋蔵量を持ち(約3,038億バレル)、サウジアラビアカナダがそれに続きますが、これらの国々の安定性や政策に大きく依存している点も課題です。

また石炭、石油、ガスなどの化石燃料の燃焼は、地球温暖化の原因となる温室効果ガスを最も排出しています。IPCCの「第6次評価報告書」によると、化石燃料由来の二酸化炭素の割合は全体の4分の3以上と、まだまだ多く、このままのペースで排出し続けると、地球の気温がさらに上昇するだけでなく、海面水位も上昇し、地球上のあらゆる場所で影響が出ます。

こうした背景から、石油依存を減らし、限りある資源を効率的に活用するために、資源の循環的利用を前提とした循環型社会の実現が急務となっています。

(3)循環型社会に向けて私たちにできることを簡単に解説

循環型社会を実現するためには、国や企業の施策だけでなく、一人ひとりの行動が大きな意味を持ちます。たとえば、以下のような取り組みはすぐに実践可能です。

取り組み内容効果
使い捨てを減らす(Refuse・Reduce)・コンビニや飲食店で不要なプラスチック製品を受け取らない
・詰め替え用商品を選ぶ
廃棄物の削減、資源消費の抑制
繰り返し使う・修理する(Reuse・Repair)・衣類や家具をすぐに捨てない
・修理・リユースを心がける
製品寿命の延長、資源消費の抑制
分別・リサイクルに協力する(Recycle)・自治体の分別ルールに従う
・リサイクルボックスを活用する
資源を再び社会に戻し循環を促進
省エネ行動を心がける・節電や節水を日常的に意識するCO₂排出削減、環境負荷の低減

こうした身近な取り組みを積み重ねることで、循環型社会の基盤は大きく強化されます。

「私たちにできること」を意識して行動に移すことが、持続可能な未来につながる第一歩です。

2.循環型社会と5R|リサイクル以外も含めた5R

循環型社会を実現するための一つの方法として、5R(リデュース、リユース、リサイクル、リペア、リフューズ)の取り組みが欠かせません。これらは、資源を効率的に利用し、廃棄物を最小限に抑えるための基本原則として機能します。
ここでは、循環型社会における5Rの具体的な取り組み内容と、それに取り組む企業のメリットについて解説します。

(1)リフューズ(Refuse)|リサイクル以外の取り組みの重要性

リフューズとは、「断る・拒否する」という意味で、不要な物やサービスを受け取らない行動を通じて廃棄物を削減する取り組みを指します。

具体的な取り組み内容と具体例は、以下の通りです。

具体的な取り組み内容具体例
過剰包装の削減・製品の包装を最小限に抑え、簡易包装を導入
・環境に配慮した再利用可能な素材(布袋、紙袋など)を使用
配送時の梱包材を削減し、リサイクル素材を採用
ノベルティや販促品の見直し・無料で配布するチラシやカタログをデジタル化し、紙の使用量を削減
・プラスチック製のノベルティや試供品を減らす
顧客が「断れる」選択肢の提供・オンライン購入時に包装なしや
簡易包装を選べるオプションを設ける
・店頭でレシート不要・袋不要を
選択可能
にする仕組みを整備
消費者教育を通じた共同行動「環境への取り組み」を明確に伝え、
企業価値を向上させる
製造プロセスの合理化不必要な原材料や部品を削減し、
製品デザインをシンプル化し、
余剰在庫を防ぐ仕組みを導入
リフューズを考慮した取り組みの主なメリット
  • 資材費や物流費などのコスト抑制
  • 環境配慮による顧客や社会的な評価の向上
  • 在庫管理や製造プロセスが効率化による無駄の削減

このようなメリットを踏まえ、サービス内容の見直し企業側のサービス提供に対して、「消費者が不要なものを断ることができる」環境づくりの検討も必要です。

(2)リデュース(Reduce)

リデュースとは、「減らす・減量する」という意味で、廃棄物の発生自体を減らしたり、資源の使用量を最小限に抑えたりすることを指します。これは、環境負荷を軽減するだけでなく、コスト削減効率向上にもつながります。

具体的な取り組み内容とメリットは、以下の内容が挙げられます。

取り組み内容具体例
原材料の見直し・汎用性のある原材料を使用し、使い残しや余剰廃棄を削減
・資材選定時に「廃棄しにくい素材」を優先する
製品設計の工夫・製品そのものを軽量化・小型化し、資源の使用を最小限に抑える
・分解・リサイクルが容易な設計を採用する
・詰め替え容器や簡易包装の普及をすすめる
・余剰生産にならないよう、受注生産などを検討する
業務効率化による資源削減工場やオフィスの作業フローを見直し、廃棄物の発生を抑えるペーパーレス化やデジタル化を推進

記のような具体例を検討し、取り組むことで、輸送コストの削減や最終処分量の低減などに繋がります。

リデュースを考慮した取り組みの主なメリット
  • 軽量化や省スペース化により、輸送コストの削減が期待できる
  • 廃棄物そのものを減らすことで、最終処分量の低減につながる
  • 効率化により生産時間を短縮し、エネルギー使用量や燃料消費を抑える

リデュースの効果を最大化するためには、自社だけでなく、サプライチェーン全体で取り組むことが重要です。

原材料や資材の選定段階から関連企業と連携し、資源使用量を根本的に削減する努力が求められます。

(3)リユース(Reuse)

リユースとは、「再利用・繰り返し使用する」という意味で、使用済み製品を廃棄せず、再利用することで資源の使用量を抑える取り組みです。

リユースの実践は、企業にとって新たなビジネスチャンスの創出と、環境負荷軽減の両面で大きな効果をもたらします。

取り組み内容具体例
リユース可能な新商品の開発繰り返し使える設計(耐久性や洗浄可能性)を考慮した商品を開発リターナブル容器(再利用可能なガラス瓶やステンレス容器)の導入
使用済み製品の回収・再利用製品回収プログラムを実施し、使用済み品を清掃・修理して再販売やレンタルに活用家電や家具などの大型製品の回収・再販売システムを構築
衛生面への配慮消費者が安心してリユース品を利用できるよう、衛生基準を満たしたクリーニングや整備サービスを提供製品にリユース回数や状態を明示し、信頼性を確保
新たなビジネスモデルの採用レンタルやサブスクリプションサービスの導入により、製品の所有から利用へシフトリユース品専門の販売チャネルを確立

リユースの取り組みで、企業の主なメリットとしては、原材料の購入コストの削減や新しいビジネスモデルの確立などが挙げられます。

リユースを考慮した取り組みの主なメリット
  • 資源の再利用により、新たな原材料の購入コストを削減
  • コストパフォーマンスを重視する消費者層に支持されやすい
  • 継続的な収益を得られるビジネスモデルの確立
    例:レンタルやサブスクリプションモデルなど

リユースの取り組みは、単に環境負荷を軽減するだけでなく、新たなビジネスチャンスの創出や収益向上にもつながります。企業としては、顧客ニーズを的確に捉えつつ、持続可能な社会の構築に貢献する取り組みが重要です。

(4)リペア(Repair)

リペアとは、「直す・修理する」という意味で、故障した製品を廃棄せずに修理して再使用する取り組みを指します。修理を通じて製品の寿命を延ばすことで、資源の有効活用環境負荷の軽減が可能になります。

取り組み内容具体例
修理サービスの提供店舗やオンラインで修理依頼を受け付ける仕組みを整備専門スタッフや設備を設けて迅速かつ質の高い修理を提供消費者が自分で簡単に修理できるツールや部品を提供
製品の修理可能性を高める設計分解・交換が容易な部品設計を採用し、修理しやすい製品を開発修理用部品の長期提供を保証し、製品寿命を延ばす
消費者への周知活動

修理による環境保護やコスト削減のメリットを伝えるキャンペーンを実施修理可能な製品であることを明確に表示し、消費者の選択を促進

上記のような取り組みから、原材料やエネルギーの削減や廃棄物の削減などがメリットとして挙げられます。

リペアを考慮した取り組みの主なメリット
  • 新たな製品を製造する際に必要な原材料やエネルギーを削減
  • 修理による製品寿命の延長で廃棄物を大幅に減らす
  • 修理サービスを提供することで、顧客との接点を増やし、リピート購入や関係強化が期待できる

リペアは単なる修理の枠を超え、製品寿命の延長や資源の持続的利用につながる重要な取り組みです。企業として、修理サービスの拡充修理可能な設計を進めることで、持続可能な社会の実現に貢献できます。

(5)リサイクル(Recycle)

リサイクルとは「再生利用」という意味で、廃棄物の中から再利用可能な資源を抽出し、新たな資源や製品に再生する取り組みを指します。これは、資源の有効活用と環境負荷軽減に寄与する重要な活動です。

具体的な取り組み内容や主なメリットは、以下の通りです。

取り組み内容具体例
資源の回収と分類リサイクル可能な資源(プラスチック、アルミ缶、紙、ガラスなど)を効率的に回収する仕組みで分別回収を促進し、廃棄物の適切な処理を行う
リサイクル可能資源の特定使用済み製品や廃棄物から、再利用可能な素材や部品を特定レアメタルや電子部品のリサイクル可能性を調査・分析
リサイクル技術の開発

・プラスチックや電子部品の効率的な分解・再資源化を可能にする技術を開発
・リサイクル過程でのエネルギー消費や環境負荷を低減する新技術の導入
リサイクルネットワークの構築・行政、企業、消費者と連携して、リサイクルの全体的な流れを整備
・リサイクル事業者との協力で、地域ごとの循環システムを確立
・再利用の繊維などから新たな衣類などの製品開発

上記のような活動や取り組みを通じて、原材料の使用量の削減ブランドイメージの向上などが企業や自治体のメリットとして挙げられます。

リサイクルを考慮した取り組みの主なメリット
  • 廃棄物を資源として再利用することで、新たな原材料の使用量を削減
  • 廃棄物処理費用の軽減につながるブランドイメージの向上につながる

リサイクルは、限りある資源を守るための基本的な取り組みであり、環境負荷を軽減しつつ新たな価値を生み出します。
企業としては、技術開発やネットワーク構築を進め、リサイクル活動をビジネスチャンスとして活用することが重要です。

3.個人ができる循環型社会の取り組み

(1)日常生活での選択|マイボトル・リフィル活用・シェアリング

循環型社会の実現には、企業や政府の施策に加えて、個人の日常的な選択が大きな役割を果たします。ここでは代表的な取り組みを紹介します。

取り組み内容効果・ポイント
マイボトルの活用ペットボトル飲料の購入を減らし、マイボトルを持ち歩く使い捨てプラスチック削減/給水スポット活用でコスト削減にもつながる
リフィル商品の利用洗剤・化粧品などで詰め替え用を選択容器廃棄量の大幅削減/市場のリフィル化を後押し
シェアリングサービスの利用自動車・自転車のシェア、洋服・家具レンタルなどを利用「所有」から「利用」への転換/資源効率化と循環型社会の基盤形成

たとえば、マイボトルの利用には洗浄の手間という課題がありますが、専用の洗浄機を導入し利便性を高める実証実験も進められています。

このように、日常生活での小さな選択を積み重ねることが、企業活動や政府施策と連動し、循環型社会の実現を後押しします。

(2)買い物・消費行動で意識できること

消費者が意識的に循環型社会を意識した商品やサービスを選ぶことで、資源の効率的な利用廃棄物削減を促進でき、結果として市場全体の変化につながります。代表的な取り組みは以下の通りです。

取り組み内容効果・ポイント
過剰包装を避ける商品選択プラスチックや紙を使いすぎた包装を避け、簡易包装やエコパッケージの商品を選ぶ廃棄物削減に直結/企業側の環境配慮型パッケージ導入を後押し
中古品やリユース商品の活用家具・衣類・家電を中古市場やリユースショップで購入/サブスクやフリマアプリを活用新規資源採掘・製造に伴う環境負荷を低減/循環型社会を支える仕組み
環境認証商品を選ぶエコマーク・FSC認証など環境ラベル付き商品を選択持続可能な生産体制を取る企業を支援/資源循環への貢献

このような消費行動の積み重ねは、単に個人の環境意識に留まらず、企業の製品開発や流通戦略にも直接的な影響を与えます。消費者の選択が市場を動かす力になることを意識することが、循環型社会を前進させます。
以下の動画ではエコマークの認定・審査のおおよその流れをご確認いただけます。

(3)地域活動やボランティアを通じた参加

地域活動やボランティアに参加することは、社会全体の循環意識を高めると同時に、企業と市民の協働による新たな価値創出にもつながります。

取り組み内容効果・ポイント
ごみ拾いや清掃活動への参加公園・河川敷などで行われる
地域清掃に参加
廃棄物の適正処理・美化促進/
地域住民の意識向上
リサイクルイベントや回収活動衣類・家電・小型家電などの
回収イベントに参加
資源の適正循環を実現/
自治体・企業連携で回収率向上
地域でのリユース・シェアの推進フリーマーケットやリユース拠点の活用
/子ども用品や家具のシェア
モノの寿命延長・廃棄物削減/
地域コミュニティの活性化

このような地域単位での取り組みは、個人の努力を越えて社会全体の仕組みを変える力を持っています。企業にとっても、地域と連携した資源循環活動に参画することは、CSRESG経営の観点から重要性が高まっています。

4.日本における循環型社会の取り組み

日本における循環型社会に向けた主な取り組みには、以下が挙げられます。

日本における循環型社会に向けた主な取り組み
・循環型社会形成推進基本法の制定
・循環型経済パートナーシップ(J4CE)
・Re-Style3R推進月間
・2Rの推進地域循環共生圏の推進

ここからは、それぞれの詳細を解説します。

(1)循環型社会形成推進基本法の制定

日本では大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済社会から脱却し、資源の効率的な利用と環境負荷の軽減を目指して2000年6月2日に「循環型社会形成推進基本法」を制定しました。

循環型社会の実現に向けた基本的な枠組みを定めるもので、廃棄物管理から資源の有効利用に至るまで幅広い分野をカバーしています。

主な取り組みとして、廃棄物排出量や不法投棄の削減、リサイクルを促進しており、個別の廃棄物・リサイクル関係法律の整備も実施しています。

循環型社会形成推進基本法の主な取り組み内容
・廃棄物の発生そのものを減らし、資源を効率的に利用する仕組みの構築
・使用済み製品や廃棄物を資源として再生利用する取り組みの推進
・廃棄物の適正処理を徹底し、不法投棄や環境汚染を防止個別のリサイクル関連法令(例:家電リサイクル法、食品リサイクル法など)を整備し、具体的な実施策を推進
参考:環境省 循環型社会形成推進基本法

循環型社会形成推進基本法は日本の環境政策の基盤を成す重要な法律であり、廃棄物の削減やリサイクルの推進において多くの成果を上げています。

(2)循環型経済パートナーシップ(J4CE)

循環型経済パートナーシップ(J4CE)は、国内外の企業や自治体、学術機関、非政府組織(NGO)など、幅広い関係者が参加する官民連携の取り組みです。

循環経済への理解を深め、その推進を図ることで、日本国内外での持続可能な社会の実現に貢献することを目的としています。

循環型経済パートナーシップ(J4CE)の主な取り組み内容
・各業界の課題に対応するための情報提供や支援を実施
・日本が持つ高い技術力を国内外にアピールし、世界のグリーン成長に貢献
・国内外での循環経済関連プロジェクトを推進
参考:環境省 循環型パートナーシップ(J4CE)

循環型経済パートナーシップ(J4CE)は無料参加可能で、各種資料やイベント情報を提供しています。
参加企業は、最新情報の入手や自社事例の発信、新たなビジネス機会の創出といった多くのメリットを得られるだけでなく、日本の競争力強化と持続可能な社会づくりに貢献できます。

(3)Re-Style

Re-Styleは、環境省が提唱する循環型社会を実現するためのライフスタイルを広める取り組みです。
公式Webサイトを通じて、3R(リデュース・リユース・リサイクル)の重要性を発信し、資源を大切に使う生活を推進しています。

Re-Styleの主な取り組み内容
・一般市民や企業に対し、3Rを実践するライフスタイルの必要性を伝える
・環境保全と持続可能な社会の実現に向けた行動を促進
・天然資源の有限性や、廃棄物削減の重要性をわかりやすく解説
・日常生活でできる具体的なアクションを提案
参考:環境省 Re-Style

Re-Styleは3Rの実践を促し、環境負荷の少ない社会づくりに貢献しています。
個人・企業・自治体が具体的な行動を起こすためのきっかけとして、Re-Styleが機能しています。

(4)3R推進月間

環境省は、3R(リデュース・リユース・リサイクル)の取り組みを広く普及させるため、2002年から毎年10月を「3R推進月間」と定めています。

この期間中、国民や事業者、自治体が協力し、循環型社会の構築を目指したさまざまな取り組みを展開しています。

3R推進月間の主な取り組み内容
・国民、事業者、行政が一堂に会し、それぞれの3Rに関する取り組みや知見を共有
・各地で講演会やシンポジウム、ワークショップなどを開催し、3Rの意識を高める
・企業が自社の3R取り組みを発信する機会を提供成功事例や実績データを公開し、3R活動をさらに拡大
参考:環境省 3R推進月間について

3R推進月間中には、全国大会を開催しており、国民・事業者・行政が一堂に会し、それぞれの取り組み内容や知見を共有する場として活用されています。

(5)2Rの推進

2Rの推進とは、5Rの中でも優先順位が高い「リデュース(廃棄物の抑制)」と「リユース(製品の再利用)」の取り組みを指します。これらの活動を優先することで、廃棄物の発生そのものを抑え、環境負荷の低減を目指すことが可能となります。

2Rの推進の主な取り組み内容
・家庭ゴミ削減キャンペーンやリユース品の譲渡会
・リデュース可能な素材の開発や製品寿命の延長を目的とした設計
・地域コミュニティでの共有経済(シェアリングエコノミー)の活用
参考:環境省 リデュース・リユース取組事例集

2Rの推進は、全国的に広まっており、各自治体や企業、地域住民が一体となって取り組んでいます。

画像引用:https://www.env.go.jp/content/900532525.pdf

(6)地域循環共生圏の推進

画像引用:https://www.env.go.jp/recycle/circul/area_cases.html

地域循環共生圏の推進は、循環型社会を形成するためには、「地域で循環できる資源は、できるだけ地域で循環させるべきである」という考えに基づいて、推進している取り組みです。地域の特性や循環資源の性質に応じ、最適な規模の循環に重点をおきます。

地域循環共生圏の推進の主な取り組み内容
・農業廃棄物や食品廃棄物を堆肥やエネルギー源として再利用
・地域で発生する廃棄物を分別・加工し、再資源化する施設を設置
・地域住民間で物品やサービスを共有する仕組みを促進
・地域内で資源循環が難しい場合、近隣市町村や都道府県、さらには国内全体での協力体制を構築
参考:環境省 地域循環共生圏(循環分野)

地域循環共生圏は、地域ごとの特性を活かした資源循環の最適化を目指す取り組みであり、環境負荷軽減や地域経済の活性化に寄与します。

段階的な仕組みを活用しながら、地域と広域の連携を強化することで、持続可能な循環型社会の構築に貢献しています。

(7)政府の施策

①プラスチック資源循環促進法

引用:https://plastic-circulation.env.go.jp/

2022年4月1日に施行された「プラスチック資源循環促進法」(正式名称:プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律)は、プラスチック製品の設計から廃棄に至るライフサイクル全体を対象に、資源循環を促進する包括的な枠組みです。
3R(Reduce、Reuse、Recycle)に加え、再生可能資源への転換(Renewable)を推進する「3R+Renewable」を基本原則としています。製品ライフサイクルごとの主な施策内容は以下のとおりです。

ライフサイクル段階対応内容
設計・製造段階・環境配慮設計指針を策定
(包装の簡素化・分解性の確保・
代替素材の検討など)
国の認定制度により支援措置あり
販売・提供段階使い捨てプラスチック(通称ワンウェイ製品)の12品目(例:フォーク、ストロー、歯ブラシ等)について使用の合理化(有料化やリユース促進)を義務化
違反には勧告・公表・命令などの措置あり。
排出・回収・再資源化段階・自治体による分別収集・再商品化の仕組みの整備
・製造・販売側が自主回収・再資源化事業計画を国に申請・認定されれば、
地方ごとの許可なしで広域回収が可能
排出事業者への対応・施設や工場でのプラスチック産業廃棄物の
排出抑制・再資源化努力を義務化

・多量排出者には公表や命令など
行政措置も含めた対応が必要

サーキュラーエコノミーへの移行による環境保護はもちろん、資源循環を新たな成長分野として投資促進の土壌とし、少子高齢化や消費者の生活変化にも応える社会変革を図るものです。

参考:https://plastic-circulation.env.go.jp/

②食品リサイクル法

「食品リサイクル法」(正式名称:食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律)は、食品関連事業者による食品廃棄物の発生抑制・再生利用・資源循環の促進を目的とする法律です。農林水産省によって、食品業界の振興と生活環境の保全の両立を目指して制定されています。
法律では、食品廃棄物(製造・調理過程のくずや流通・消費段階の売れ残りや食べ残しなど)に対し、段階的な3R的アプローチを設定しています。

段階内容具体例効果
発生抑制そもそもの食品廃棄物を減らす在庫管理の最適化、
調理・提供プロセスの見直し
廃棄量そのものを削減、コスト低減
再生利用廃棄物を資源として再利用飼料や肥料などの「食品循環資源」への転換資源の循環利用、農業・畜産の持続可能性強化
熱回収再生利用が困難な廃棄物をエネルギー利用焼却時の熱を回収し発電・温水利用廃棄物の減容化、エネルギー効率の向上

食品リサイクル法は、食品ロス削減・資源循環推進・SDGsとの整合性を高める上で重要な役割を果たしています。国全体による数値目標の掲示や報告制度の整備により、食品ロスに対する産業界、行政界、消費者の役割が明確化されています。

参考:https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/161227_6.html

5.国際的な循環型社会への取り組み

循環型社会の実現は、環境問題へのグローバルな解決策として、世界中で注目されています。
ここでは、国際的に推進されている主な取り組みを2つご紹介します。

(1)アジア太平洋3R推進フォーラム

アジア太平洋3R推進フォーラムは、日本が提唱し、アジア圏を中心に「リデュース(Reduce)」「リユース(Reuse)」「リサイクル(Recycle)」の取り組みを促進するための意見交換の場として2009年に設立されました。

アジア太平洋3R推進フォーラムの主な活動内容
・政府間における3Rに関する政策課題や成功事例などの対話
・3Rに基づいた資源循環型社会の構築において、技術協力の情報提供を実施
・各開催地で3R宣言を採択し、具体的な行動計画や目標を明確化

フォーラム設立以来、毎年の会合で各国が連携し、3R宣言を採択しています。この宣言は、地域ごとの課題に対応しながら、3R活動を推進するための共通目標を定めています。

(2)使い捨てプラスチック製品の流通禁止

EU(欧州連合)理事会は、プラスチックによる環境汚染問題に対応するため、使い捨てプラスチック製品の流通禁止を目的とした法案を採択しました。特に海洋プラスチックごみの削減を重視し、循環型社会を実現するための重要な一歩となっています。

禁止対象のプラスチック製品は、以下のとおりです。

  • ナイフ・フォーク・スプーン・箸のカトラリー製品
  • サラダボックス
  • 生鮮食品や加工食品の容器、飲料容器
  • プラスチック製の飲料容器のキャップ・フタ食品・飲料容器の包装
    参考:日本貿易振興機構(ジェトロ)

ヨーロッパ諸国では、プラスチック・ボトルの回収率を2029年までに90%、プラスチック・ボトルのリサイクル材料含有率は、2025年までに25%2030には30%まで高めることを目標にしています。

なお日本の2023年度におけるプラスチック・ボトルの回収率は85%であり、先進国の中でもトップクラスの数字です。業界全体として、引き続きこの数字以上の回収率を目標とし、取り組んでいます。

(3)EUの循環型経済政策・国連SDGsとの関係

EU(欧州連合)は、早くから「循環型経済(サーキュラーエコノミー)」を成長戦略の柱に位置づけています。以下では、EUの循環型経済政策と国連SDGsとの関係について解説します。

①EUの循環型経済政策

EUは2015年に「循環型経済行動計画(Circular Economy Action Plan)」を発表し、製品設計から廃棄に至るライフサイクル全体を対象に資源効率を高める政策を推進してきました。2020年には「新循環型経済行動計画」が策定され、特に以下の分野が重点化されています。

  • 持続可能な製品設計(長寿命化・修理可能性の確保)
  • プラスチック対策(使い捨て削減・リサイクル材利用の義務化)
  • 電池・電子機器のリユース・リサイクル強化
  • 食品廃棄物の削減目標設定

EUはこれらを通じて、2050年カーボンニュートラル達成の基盤を築こうとしています。

②国連SDGsとの関係

国連の持続可能な開発目標(SDGs)でも、循環型社会は次のように直接的・間接的に位置づけられています。

  • 目標12「つくる責任・つかう責任」廃棄物削減や持続可能な生産消費の確立
  • 目標13「気候変動に具体的な対策を」資源効率向上による温室効果ガス削減
  • 目標15「陸の豊かさも守ろう」資源採掘圧力を軽減し、生態系保全に寄与

つまり、EUの循環型経済政策は、SDGsの理念と整合性が高く、「資源循環=「気候変動対策・生態系保護・経済成長」を同時に実現するアプローチとして世界的に注目されています。

6.循環型社会の実現に向けた企業等の取り組み事例

(1)小林製薬株式会社「水使用量削減」

引用:https://www.kobayashi.co.jp/contribution/environment/water_resources.html

小林製薬株式会社は、今後さらに深刻化が予想される水資源問題を重要な環境課題と位置づけ、国内の各生産工場で水使用量の削減と水質保全活動に取り組んできました。

2022年、同社は水使用量の削減に向け、取水量、排水量、排水の質を毎年継続的に監視し、良質な製品を安定的に生産しながら、水使用量を可能な限り削減するなどの取り組みを実施しています。

事業に影響を与える水関連のリスクを継続的に把握し、リスクを低減するための対策を実施しています。

(2)東急株式会社「節水機器導入」

引用:https://www.tokyu-store.co.jp/environment/

東急株式会社では、自社が運営する東急ストアの厨房に「節水機器」を導入し、水道使用量を低減し、CO₂の削減に成功しています。

水道蛇口に水圧調整可能な「節水コマ」を取付け、厨房機器や食器などの汚れ具合に応じて出水量や水圧を調整しています。

2018年5月より、84事業所すべてに導入し、年間で約97,000立方メートルの水道使用量の削減、33トンのCO₂削減(人工林のスギ約2,300本分の年間吸収量に相当)を実現しています。

(3)日本チェーンストア協会「包装容器のリサイクル推進」

引用:https://www.jcsa.gr.jp/topics/environment/approach.html

日本チェーンストア協会では、環境負荷を低減させるため、「包装容器のリサイクル推進」に積極的に取り組んでいます。「チェーンストア業界の環境保全自主的行動計画」に基づき、協会と会員企業、地域住民が一体となって実施されています。

具体的な取り組みとして、レジ袋削減包装容器の簡素化・減量化、包装容器の店頭回収の促進が挙げられます。

たとえば、レジ袋の強度を維持しつつ厚みを薄くする工夫や、レジ袋を辞退した顧客にポイント還元や現金値引きを行う仕組みが導入されています。これらの施策の効果により、2024年3月時点でレジ袋使用を辞退する顧客の割合は83.28%まで上昇しました。

7.まとめ

最近では、従来の3Rに加え、リフューズ(拒否)やリペア(修理)を含めた5Rの実践が注目されています。

循環型社会を実現するためには、上述した「なぜ」今取り組むべきかという背景とその実践方法を理解した上で、企業としての意識改革、新たな取り組みにチャレンジできることが望ましく、そうすることによって、消費者の意識も変わり、より地球環境を考慮した循環型社会の実現につながるでしょう。

監修

エシカル・サステナブル分野の知見と実践を基盤に、情報発信・プロジェクト推進に携わるフリーランス。外資系広告代理店で10年以上、営業・翻訳・資料作成・プロジェクト進行に従事。退職後は環境問題に意識を向け、エシカルコンシェルジュ認定を取得し、サステナブルアイテムのショップも運営。広い視野で全体最適を図り、冷静かつ柔軟に課題解決へ導く力に強みがある。

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